70 ページ26
・
『これがターゲットの屋敷？』
「うん」
『正面から行くの？』
「うん」
深夜。イルミさんに運ばれて到着したのは森の中に聳え立つお屋敷の前。それはまるで誰も住んでいなさそうな、むしろしばらく使われていないのではないかと思うほど、随分と年季の入った建物だった。入口には蜘蛛の巣が張り、真夜中の暗闇を背に、月明かりだけに照らされたその別荘は、お化け屋敷のように不気味な雰囲気を漂わせていた。
「行くよ」
少しだけ怯む私などお構い無しに、イルミさんは正面から扉を開けて入っていった。慌ててその後を追う。
人の気配はない。手当り次第近くの部屋を開けても誰もいない。上の階か、それとも…。
……ターゲットは武器や薬などなんでも取り扱う密輸人だという。依頼主は、ターゲットの密輸した劇薬により国を壊滅状態にまで追い込まれた小国の王。
ターゲットは臆病で素性はほとんど不明だったが、ハンターライセンスで金を払い情報屋を経由すればすぐに身元が割れた。本当に用心深い人はそんな情報すら残さない。
「A、円」
『……地下』
臆病なものほど隠れるものは下って決まっている。
円に引っかかったのは床下の空洞とそれに繋がる扉。イルミさんが扉を開けると地下通路が現れた。その先に続く道に、入りたくないなと思う。道は広く、ご丁寧にランプには明かりが灯されている。罠だ。
しかし当然のように入っていくイルミさんの後を恐る恐るついていく。先が見えないほど長く続く道の左右には、ホテルのようにたくさんの部屋の扉がある。しかし円に人は引っかからない。
「…毒が充満してるね。俺は平気だけどお前はあと数分で死ぬよ」
『っえ？』
歩くこと数分、すんと鼻をならしたイルミさんが、突然めちゃくちゃ恐ろしいことを言った。
いや、一応私だって、昔にシルバさんやキキョウさんが私に毒の耐性をつけようと毒殺未遂をし続けてきたのだから、普通の人間と比べると極僅か、雀の涙ほど、薬が効きにくい体質になっている。例えば、市販の風邪薬や痛み止めは効きにくい。
まぁつまり、普通に死ぬんだけど。
ていうかイルミさんに言われた途端なんか頭痛くなってきた…。服の袖を口元に当てて、帰ろうと促すようにイルミさんの手のひらを掴んだ。
ーー瞬間、ふわりと僅かに香った火薬の匂い。
カッと目の前が光って、爆風に包まれた。
・
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 991人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「HUNTER×HUNTER」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
うさぎもち - 私、この作品すっごく好きです！！！夢主ちゃんの性格もめっちゃ好きです！ (11月22日 16時) (
レス) id: 6ed501a3ba (このIDを非表示/違反報告)
みき(プロフ) - パスワード教えてもらいたいです！この作品の続きが気になりすぎてねむれません！ (2020年4月29日 5時) (レス) id: be75996472 (このIDを非表示/違反報告)
ogofumi(プロフ) - 最近、H×Hにはまってこの作品を見つけ、虜になりました。この作品の続編にパスワード保護がかかっているのですが、パスワードって教えてもらえませんかね…？凄く凄く続きが気になります！ (2020年4月16日 14時) (レス) id: d6342d80f2 (このIDを非表示/違反報告)
未確認歩行物体(プロフ) - 紅蘭さん» 不安定なペースですが、勿体ないお言葉までありがとうございます…！へへへ残念な性格ですが、そう言って貰えて主も喜んでいると思います。これからも頑張ります(っ'ヮ'c) (2017年5月27日 1時) (レス) id: d2e199629a (このIDを非表示/違反報告)
未確認歩行物体(プロフ) - サメ子さん» コメントありがとうございます(*´∇｀*)そこらへんはしっかりブレない主です！ｗｗ ハイキューの方も！そう言って貰えて本当に嬉しいです！これからもよろしくしてやって下さい…！()応援ありです！ (2017年5月27日 1時) (レス) id: d2e199629a (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
