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▽(黒尾視点)
部活の休憩中、鞄からタオルを取り出し「あ」と声上げた研磨の横に、ゲームソフトが一つ転がった。
鞄の底に入り込んでしまってたらしい、昨日Aと弟氏が遊びに来た際プレイした、Aのソフトだ。
2人はそろそろ宮城に戻る時間か、こりゃ今度会う時かなぁと思っていたら、夜久が監督とぱっと話して何故か今から俺が走って届けに行くことになった。ちょ夜久さん!?
俺は言われるがまま、長袖ジャージとソフトだけ投げるように渡されて受け取り、困惑しながら駅へと走った。なんで?
息を切らしながら駅につくと、改札を通った二人の姿が見えたから急いで呼び止めた。驚いた顔をしたAが時計を確認して、弟氏と少し話した後、Aだけが小走りでこっちにきた。
「これ、お前の、昨日間違って研磨の鞄に入ったみたいで、さっき見つけた」
様子をみていた係員に頭をさげて察してもらい、ポケットからソフトをだして、Aに渡した。Aはあっと顔をした後、お礼を言ってそれを受け取った。
…一瞬、変に沈黙しそうだった。
『わ、わざわざ届けに来てくれたのか…』
「夜久に今行けってさ。まぁそれなきゃ次まで通信して遊べないだろうし」
『うん、ありがとう。研磨くんにもよろしく!助かった』
「おう。じゃ、気をつけて帰れよ。んで、また来いよ」
音駒のみんなも、俺の母さんも研磨の母さんも、研磨も、俺も。お前らが来んの、楽しみに待ってるからさ。
少し小っ恥ずかしい気もしたがそう言うと、Aは目を見開いた。わりかしマジトーンで言ってしまったし、らしくないと馬鹿にされるかと思ったがAは目を見開いたまま動かない。
「え…なにそんな衝撃的?」
さすがにそんなガチで驚かれるとなんか傷つくんだけど、って思ったら、『えっ、あ、いや違くて、」と、Aはどこかまだ衝撃を受けたような顔をして首を降った。
『……なんでか今、私の周りに、みんな、私以外、否定する人がいないって…気づいた』
「な、なんの話?」
なんか日本語変だし話の先が全く読めないんだが。
『てつろう』
「は、はい」
返事をしたあと、あ、久しぶりに名前で呼ばれた…なんて思ったけど、それもすぐに頭から飛んだ。
『わたしも、お前のことすきだわ』
「…え?」
『じゃ!アデュー』
「え?」
まるで言い逃げのように走って人混みに消えたAを見ながら、立ち尽くす。聞き耳を立てていたのか、窓口の係員がひゅっと息を呑んで口を押さえた。
【黒尾鉄朗END】
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マニ。(プロフ) - 未確認歩行物体さん» ✉️。この作品もとても面白いです!これからも応援してます! (11月22日 14時) (レス) id: b32654e3a5 (このIDを非表示/違反報告)
reia(プロフ) - 私、占いツクールで布教活動をしているのですが、この作品のシリーズ、とても好きなので布教してもよろしいでしょうか? (2022年3月24日 22時) (レス) id: 0d7a47aa6b (このIDを非表示/違反報告)
未確認歩行物体(プロフ) - mooさん» はじめまして!わーい、たくさん褒めて頂きとても嬉しいです(*´∀`*)こちらこそコメントありがとうございました!( ´ ▽ ` )/ (2021年8月9日 10時) (レス) id: a04ea61aea (このIDを非表示/違反報告)
moo(プロフ) - 初めまして、モテ期到来からの各ルートとオマケまで読めて最高でした!ありがとうございます!! (2021年7月7日 16時) (レス) id: 36860c259a (このIDを非表示/違反報告)
未確認歩行物体(プロフ) - きゃーぽんさん» きゃーぽんさん、コメントありがとうございます!完結してから4年経った今でも、この作品を見つけて読んでくださった方がいる事がとても嬉しいですヽ(;▽;)ノお褒めの言葉まで頂き、本当にありがとうございます!! (2021年5月18日 22時) (レス) id: d428059590 (このIDを非表示/違反報告)
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