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次の日。
普通に朝から部活があって、昼をまたいで部活が終わる頃にはもう外は真っ暗だった。いつもだけど。
選手は着替えに部室に行き、一足早く帰る支度をすませたマネージャーが先にゆっくりと帰路についていた。
後ろから西谷さんと田中さんが走って追いついてきて、そこから集団で帰り、だんだんと岐路で人が減っていく。
そうなるとやっぱり最終的にどうしてもできる二人組の相手が、いつもコイツなのは変わらない。
横を歩く影山。
なんか考えてるよ…。
「…なあ」
『ん?』
「……確かめたいことがある」
そう言って突然に引かれた腕と感覚に、デジャヴを感じた。さっきから考えてたのはこれをするかどうかだったの?
昨日よりは控えめに、軽く影山のジャージに触れる程度に抱きしめられて、何も考えたくなくなる。
『あの…』
「…………悪ぃ、」
なんか謝られたけど、謝るならするなよって、本当にその通りだと思う。
けど同時に解放されて、今度は突き飛ばされなかっただけマシかと、息をついて影山をみた。
『……』
「……」
『……』
「な、なんだよ!」
それはこっちの台詞なんですけどね。
真っ暗な夜道でも、街灯の灯で照らされて、見えなかった振りをするには見えすぎた。
どうやら私は、大きな勘違いをしていたようだ。
『……影山ってさぁ、ほんっと馬鹿だよね…』
「あ、ああ!?」
『もぅマヂ無理。…マリカしょ…』
なんでそんなに赤くなってるの…。口元を隠すように片手で覆い、真っ赤になった顔で、影山は汗までかいていた。
そらされていた目が合うと、お互いすぐにそらすことができなくて、あまりの焦燥感にむしろ私が脱力した。
普通の友達としては近すぎた一瞬の距離で、そんな顔されたら、全く、調子が狂ってしまう。
本当に迂闊だったよ。
お前が馬鹿すぎるから、油断していた。そのせいでこっちまで大事故だよ。もうホント無理…語彙力が来い。
はぁ…。
『……かげやま』
「ん、だよ」
『____っばーか、』
私は一気に全力疾走して家まで帰った。
かなり遅れて怒鳴る影山の声を後ろで聞きながら、私はつられて真っ赤になった顔の熱が早く冷めることだけを祈っていた。本当に、つられただけ。マジで。
【影山飛雄END】
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マニ。(プロフ) - 未確認歩行物体さん» ✉️。この作品もとても面白いです!これからも応援してます! (11月22日 14時) (レス) id: b32654e3a5 (このIDを非表示/違反報告)
reia(プロフ) - 私、占いツクールで布教活動をしているのですが、この作品のシリーズ、とても好きなので布教してもよろしいでしょうか? (2022年3月24日 22時) (レス) id: 0d7a47aa6b (このIDを非表示/違反報告)
未確認歩行物体(プロフ) - mooさん» はじめまして!わーい、たくさん褒めて頂きとても嬉しいです(*´∀`*)こちらこそコメントありがとうございました!( ´ ▽ ` )/ (2021年8月9日 10時) (レス) id: a04ea61aea (このIDを非表示/違反報告)
moo(プロフ) - 初めまして、モテ期到来からの各ルートとオマケまで読めて最高でした!ありがとうございます!! (2021年7月7日 16時) (レス) id: 36860c259a (このIDを非表示/違反報告)
未確認歩行物体(プロフ) - きゃーぽんさん» きゃーぽんさん、コメントありがとうございます!完結してから4年経った今でも、この作品を見つけて読んでくださった方がいる事がとても嬉しいですヽ(;▽;)ノお褒めの言葉まで頂き、本当にありがとうございます!! (2021年5月18日 22時) (レス) id: d428059590 (このIDを非表示/違反報告)
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