01:及川 徹 ページ28
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「Aー!風邪ひいたって?お見舞いに来たよー!」
『なんで知ってるの?ありがとうさっさと帰れ』
唐突の奴の訪問に、ベッドに横になりながら目頭を押さえた。
数日前、春高の県大会で、我が校のバレー部は見事激戦を制し全国出場を決めた。
その対戦校の選手であった彼は3年生であった為に、今はもう部活動を引退しているわけだが。
受験生という立場を思い出したのか、最近訪問回数が減ったと思ったら…。
今は私以外誰も家にいない訳だから勝手に入ってきたのだろうけど、もうそれが問題にならないあたり我が家つんでるよねー…。
「折角!この忙しい及川さんがお見舞いに来てあげてるのにっ」
頬膨らましてぷんすか怒る仕草、いい加減気持ち悪いのでやめてくれませんかね?
けれど、そう憎まれ口を叩くことすら億劫な程に今日は調子が悪い。
まぁ風邪をひいたわけですけど。
「もーAも貧弱だねぇ…これから全国って時期に風邪ひくなんて。飛雄ちゃんオコでしょ〜ぷぷぷ」
『いがいたい』
「あ、優しい及川さんがプリン買ってきたけど食べる?」
『たべる…』
いくらなんて言おうが食欲にはかてないわけで、持っていたビニール袋を掲げられて、布団からのそのそと起き上がる。
少しはいいとこあるじゃないか。
が、食べさせてあげる!と嬉々としてプリンを取り出した及川に少しあがりかけたテンションがさがる。わぁ…あたまいたい…。
「はいっ!あーん」
ここまで来ると抵抗するのも面倒くさい。
熱でぼーっとする頭を動かすのをやめて、素直にプラスチックのスプーンにすくわれたプリンを口に入れた。
当の及川はまさか私が食べると思わなかったのか目を丸くした後、初めて餌付けが成功したかのようにキラキラと嬉しそうに目を輝かせた。
私はペットかなにかかな?
『…ん、ごちそうさまでした』
「お粗末さまでした!」
ゆっくりだったけども、空になった容器ににまにまと口元を緩める及川になんというか、ため息がでそうになる。
けど、少しだけ治まった気がする頭痛と熱に免じて許してやろう。
『食べたから寝る…ありがとうもう帰っていいよ』
「んふふーもう少しいるよ」
『いい加減うつるから帰れ』
「ふふん、ちゃんとマスクもってきたんだよっ」
『遅くね?』
そうですかそうですか。もう勝手にどうぞ!
うつってもしらないからな。
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マニ。(プロフ) - 未確認歩行物体さん» ✉️。この作品もとても面白いです!これからも応援してます! (11月22日 14時) (レス) id: b32654e3a5 (このIDを非表示/違反報告)
reia(プロフ) - 私、占いツクールで布教活動をしているのですが、この作品のシリーズ、とても好きなので布教してもよろしいでしょうか? (2022年3月24日 22時) (レス) id: 0d7a47aa6b (このIDを非表示/違反報告)
未確認歩行物体(プロフ) - mooさん» はじめまして!わーい、たくさん褒めて頂きとても嬉しいです(*´∀`*)こちらこそコメントありがとうございました!( ´ ▽ ` )/ (2021年8月9日 10時) (レス) id: a04ea61aea (このIDを非表示/違反報告)
moo(プロフ) - 初めまして、モテ期到来からの各ルートとオマケまで読めて最高でした!ありがとうございます!! (2021年7月7日 16時) (レス) id: 36860c259a (このIDを非表示/違反報告)
未確認歩行物体(プロフ) - きゃーぽんさん» きゃーぽんさん、コメントありがとうございます!完結してから4年経った今でも、この作品を見つけて読んでくださった方がいる事がとても嬉しいですヽ(;▽;)ノお褒めの言葉まで頂き、本当にありがとうございます!! (2021年5月18日 22時) (レス) id: d428059590 (このIDを非表示/違反報告)
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