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私がゴンくん達とグルと知られてしまった以上、あの場にいても人質(私)が増えるか死人(私)が出るか、余計に警戒される(私)だけである。素の身体能力が低い私では、いくらテレポートを駆使しても、パクノダによって能力も知られていて、かつ警戒してる旅団五人を相手に二人を奪還することはまず無理。ていうかそもそも能力は団長の人にバラされてんじゃね?
深く考えてる時間もなく、私は一旦逃げるを選択。弱くてすまんな…。
とりあえず能力の到着地点を "レオリオ=パラディナイト" にして発動すると、狭い車内に降り立ってそのまま天井に頭をぶつけた。衝撃を受け止める以前に動いている車内ではバランスも取れず、思わず頭を押さえてシートに手をつく。と、至近距離に目を見開いたクラピカ氏の顔。鼻先が触れそうな距離に慌てて体を離した。まじでガバガバだなこの能力!
その横には鎖に捕まった幻影旅団の団長が座っていて、急に現れた私に驚きで目を見開いていた。助手席に座っていたセンリツさんも驚いていて、運転席のレオリオ氏が「相変わらず前触れがないのはビビるな…」と息をつく。
けどどうやら、誘拐には成功したようだ。
『…っと、ごめん。二人の奪還が出来なかった。またプランを考えなきゃ』
「ああ、あれでは無理もない」
その口振りからすると、私が二人を連れて逃亡することが出来なかったのを分かっていたようで、とても不甲斐ない。「だがお前がいなければ、この作戦は最初から失敗に終わっていた」と目を細めたクラピカ氏に、なんとも言えない気持ちになる。
とりあえず危ないから座るといい、そう言われてクラピカ氏と蜘蛛の団長の真ん中に座るが、落ち着かない。ちらりと横を見て、鎖に縛られ大人しく座っている男がいるのはシュールだし、心情的にも正直めちゃくちゃ居づらい。多分これは微妙な罪悪感だ。
「…まさかお前もそちら側だったとは、思いもしなかった」
座高の問題で私を横目で見下ろしながら、ぽつりと口を開いた男。
『…私も最初、雰囲気違いすぎて気づきませんでした』
あまり目を合わせずに返すと、男も前を向いて「道理でまるで知らずに近づいたようなリアクションだったわけか」と納得したように呟いた。
「……A…、お前はこいつらと、蜘蛛と既に知り合っていたのか?」
まぁ、やっぱりそうなりますよね…。疑問と困惑が複雑に混ざりあった表情でそう問うクラピカ氏に、私もなんて答えようか迷ってしまった。
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未確認歩行物体(プロフ) - たくさんのコメントありがとうございます。まとめての返信で失礼します。しばらく更新していないにも関わらずたくさんの反応を頂きとても嬉しいです!ありがとうございます! (2021年11月24日 18時) (レス) id: 859f873e93 (このIDを非表示/違反報告)
moo(プロフ) - 読んでいく事にチートっぷりを発揮してて面白かったです!最高! (2021年7月8日 14時) (レス) id: 36860c259a (このIDを非表示/違反報告)
なめなめきゃんでぃ(プロフ) - めちゃめちゃ面白くて読んでいてとっても楽しかったです!番外編や次回作など楽しみにしてます!できたらで良いので書いてくれると嬉しいです!素敵な作品を書いてくださりありがとうございました!!! (2021年4月8日 23時) (レス) id: ed253bb936 (このIDを非表示/違反報告)
猫神(プロフ) - とても面白かったです!蟻編楽しみにしています! (2021年1月16日 0時) (レス) id: f54e673977 (このIDを非表示/違反報告)
甲賀忍者(プロフ) - 番外編で構いません!更新いつまでもお待ちしております! (2020年11月12日 22時) (レス) id: 0e780aa7b5 (このIDを非表示/違反報告)
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