【HUNTER×HUNTER】運命とは複雑なものである。

123 ページ35

・


ゴンくんは膨大なオーラの消費による疲労、ヒソカは右手が複雑骨折レベルの重症、キルアもきっと両手共に重症だ。それに気づいていたツェズゲラさんが一旦タイムを取り、キルアの代わりに俺がボールを持つと、ゴンくんに外野に来るように言う。

自分の意思で外野に行くのありなのか…盲点だった！とか思っていたら、何ともないと嘘をつくキルアの両手がえぐい事になっていて思わず息を呑む。いくらゾルディック家出身と言ってもそれが痛くないはずはない…。むしろ感覚とか残ってるの？
それでも、このまま試合に出るというキルア。どう見てもボールを持てる状態じゃないのに。手首で挟めば行けるって、お前なぁ…。

さすがのビスケさんも反対するけど、ゴンくんがキルアがいい、キルアじゃないとダメだと言う。こんな状況なのに、そう言われて嬉しそうにはにかむキルアにため息が出た。それもう恋レベルだよ…。


『…こんな為に作った能力じゃないんだけどなぁ』

「A？」


今度は自分にため息。


『……キルア』

「？ なんだよ、ッていﾞっっでえええ…え、」


頼まれてもいないのに、自分で自分が嫌になる。腹いせにキルアの手を強く握るとよほど痛いのか涙目になっていた。しかし次の瞬間、痛々しく紫色に腫れあがった手が元通りになる。目を見開くキルアと外野。
驚く周りの人の意識がキルアの手に行っているうちにキルアの手を離し、ポケットに自分の手を突っ込んだ。正直後悔しかしていない。


「っは？ 治っ、お前、その能力、」

『1回しかできませんからね。あとはガンバ』


治癒の能力と誤解させて、更に他のメンバーをお願いされる前にその場から離れる。目をぱちくりさせたキルアが自分の手をぐーぱーと握り、状況を飲み込んだのか私に向かって「サンキュ！」と叫んだ。
…私の手がさっきのお前の手の状態になってるいるなんて、お前は微塵も知らないんだろうけど。
治癒も出来たらよかったなぁ…とズキズキと痛む手に涙目になっていたら、横にきたビスケさんが「…なにが治癒だわさ」とどこか不満そうに目を細めた。どうやら彼女の目は誤魔化せなかったらしい。


「今回は黙っといてあげるけど、試合が終わったらすぐに手当なさい！」

『言われなくても…めちゃくちゃ痛いです…』

「はぁ…ほんっと、姉弟揃って素直じゃないわねぇ〜！」

『わぁ…ビスケさんが年上っぽい…』


年上だった。


・

124→←122

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す