【文スト】我、妖狐なり

数年前【特別編】 ページ18

これは数年前。
中也がまだAのところで修行している、15歳の時の話。





A「中也。儂の愛しい中也は居らぬか？」


中「？はい、母さん」


A「おお、そこに居ったか。急ぎの用があってのぅ、ちと頼まれてくれぬか？」


中「良いですよ。何をすれば？」



A「中也。酒の目利きは出来るか？」



中「…？？まぁ、人より出来るかと」


自他ともに認める酒好きである中也は、酒に関する目利きは自信があった。

世間一般の法律など、ポートマフィアには関係ない。未成年のうちから酒を嗜む。

まず、母であるAの頼みだ。
誰に振る舞われる物であろうと、失敗は許されない。失敗すること即ち、Aの顔に泥を塗る事になるからだ。




中「どなたかにお贈りしますか？手続も済ませて来ますが…」


A「否、その必要は無い。贈り物じゃが手渡しの方が良いじゃろ」


他にも多々頼まれ、中也は麓へ下りた。





頼まれていたものを小さく復唱し乍、次々買っていく。
Aからの頼まれごとは買い物で、種類の幅が広かった。お蔭で昼から出ていたのに、夕方までかかっている。



もうすぐ日も落ちる。

最後の買い物である酒を買いに、ポートマフィアの息のかかった店に足を踏み入れた。
世間の店では、未成年である中也は酒を買えない。どころか店にも入れない。

Aには、酒は中也の好みに合わせると仰せつかった。
曰く、自信があると言った中也の好みならば、誰に出しても良い。との事。


中「(つってもどうすっかなぁ…)」


中也は贈る人物の事を何も知らないのだ。
自分と好みが違えば、気に召すことは有り得ない。



中「母さんは俺と好みが絶対一緒だって云ってたなァ…」


さぁ、どうすべきか。

悩んだ末、中也は自分の中で一等好きな物を購入した。
安くもないが高くもない。だが、自分が勧めるならこれぞという品である。


買い物は終わった。

後は愛しい母の待つ家に帰るのみ。

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