記憶喪失 ページ2
私は、自分の腕から抜かれていく血を見る
二酸化炭素を多く含む、どす黒い血液が静脈から抜き取られていく
「……A様」
白衣を着た女が、私の名を呼ぶ
私はそちらを見る
注射器の針を抜き、彼女は言う
「検査はこれで、すべて終わりです」
「ありがとうございました」
私は頭を下げる
それからまくっていた服の袖を、元に戻す
そこで、背後でドアが開く音がした
医者があからさまに緊張するのを感じた
誰か、お偉い様でも来たのだろうか
振り向くとそこには、見知らぬ男が立っていた
冷たい瞳を持った男だった
その男が、医者に聞く
「検査は終わったか?」
「はい。今終わりました」
「異常は?」
「……特に異常はないのですが、一つ、気になることが」
医者の言葉に、男の表情が険しくなる
そして話を促すように言う
「何だ?」
「A様の記憶の一部が、破損している可能性があります」
男がこちらを見る
そして、
「本当か?」
そう聞かれる
私はそれに、どう答えるか迷う
恐らくだが、記憶は失くしていない
どうやらここは、私の知ってる世界とは違うようなのだ
周りの風景も、人間関係も、まるで違う
自分の顔さえも違っていた
一緒なのは名前だけだ
……今は、記憶喪失ということにしておいたほうが無難かな
そう思い、私は静かに頷く
それを見て、男が更に質問を重ねてくる
「俺のことは覚えているか?」
「覚えてないです」
男は私の反応を見て、頷く
そして言った
「その様子だと、本当に俺のことは覚えていないみたいだな。じゃあ、従者の奴らは覚えているか?」
「従者?」
「……覚えていないようだな」
男は少し、顔を歪める
それから何か考え込み、
「……わかった。とりあえずお前に、失った記憶について教えよう。場所を変えるぞ」
そう言って彼は、踵を返す
着いてこいという意味だろうか
私は椅子から立ち上がり、彼の後を追う
医者が言う
「このことは天利様に……」
「報告しなくていい。こいつは俺の部下だ。俺が面倒を見る」
「わかりました」
……なんか、面倒なことになりそうだなぁ
ぼんやりとそんなことを思いながら、彼に着いて行った
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ゆうな(プロフ) - セラフ作品 , 全部読ませていただきました ! どれもお気に入りです 。更新楽しみにしています ! 頑張ってください ! (2018年10月12日 0時) (
レス) id: dbe1d7a27d (このIDを非表示/違反報告)
もちもち(プロフ) - まゆさん» ありがとうございます。そう言ってくださると嬉しいです！更新頑張ります。 (2017年12月27日 19時) (レス) id: 0767b2f3df (このIDを非表示/違反報告)
まゆ - 続編おめでとうございます^_^面白かったです^_^続きが、すごく気になります^_^これからも、頑張って下さい^_^ (2017年12月16日 0時) (レス) id: 8c0a96a096 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：もちもち | 作成日時：2017年7月5日 20時
