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17話 ページ19

部下たちも育ち、組織としてやっと機能してきたある日

私はいつも通り、部下から提出された書類を読んでいた
近辺の原初獣たちの動きについて記されている

以前のデータと見比べて、私は溜息を吐いた

最近、他の原初獣の動きが活発化している
最初は誤差だったそれが、だんだんと大きくなっている

その理由はわからない
ちょうど今、総員でその理由を究明しているのだが

……どうにもきな臭い

私が書類を片手に悶々と考えていると、自室の扉が開いた

そちらへと視線を移すと、そこにはベリアルが立っていた
私はいつものように彼に微笑みかける

「ベリアル。久しぶりだね」

「ああ、久しぶり。A」

彼はルシファー直属の補佐官となってから、私たちとの関わりが減った

裏で色々と動いているらしい
その仕事がどのようなものまでかは知らないけれど

ルシファーのことだ
彼を使いっ走りにしているのだろう

彼はルシファーに使われることを誇りに思っているようなので、何も言わないが

……そういえば、丁度その頃から原初獣の動きが活発化した

私はベリアルを見る
彼はいつも通りの優しい笑みを浮かべている

彼は言う

「随分と険しい顔をしている。手こずってるのか?」

「ああ。正直、私の手にも余る」

私はいつものように言葉を返す
弱音を零すと、彼は私を労わるように言った

「君が手こずるなんて珍しい。それに君、最近働きっぱなしだろ?ここらでちょっと一息吐いたらどうだ?」

「……そうだね、少し休憩することにしよう」

私は書類を机の上に置く
彼はそれを見た後、言った

「相当疲れているようだ。今回はオレが紅茶を淹れよう」

「本当かい?君の紅茶は美味しいから、楽しみだ」

「君にそう言われるなんて光栄だ。そこで待っててくれ」

そう言って彼は、私の横を通り過ぎ、棚へと手を伸ばす
紅茶を淹れる準備を始める

私は彼の動きを眺めながら、紅茶を待つ

少しして、彼はティーカップを持ってくる
コトリと、目の前に置かれる

「どうぞ」

「ありがとう」

私はカップを手に取り、一口飲む

やはり彼の紅茶は美味しい
毎日飲みたいくらいだ

私は聞く

「君は飲まないのか?」

「オレはすぐに出なくちゃいけない」

「反乱を起こすために?」

その言葉に、沈黙が落ちる

彼は笑っていた
楽しそうに、嗤っていた

いつもの優しい笑みではない、嘲笑うような表情

……ああ、これはもうダメだな

私は彼の顔を見て、へらりと笑った

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うさ - 続き楽しみにしてます。 (2019年6月30日 18時) (レス) id: ef6ea16959 (このIDを非表示/違反報告)
東雲ノア(プロフ) - 表現、話の内容、書き方全てがとても好みです。久し振りに素敵な作品に出会えました。陰ながら応援してます。 (2019年4月5日 12時) (レス) id: be86295bcb (このIDを非表示/違反報告)
こまこ - 最高です。 (2019年3月24日 4時) (レス) id: 95e04e1a30 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:もちもち | 作成日時:2019年3月14日 13時

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