26話 ページ29
刀同士がぶつかり、金属音が鳴り響く
刀越しに、目の前の吸血鬼を観察する
黒髪に、吸血鬼には珍しい、紺の瞳
瞳が赤くないということは、まだ血は飲んでいないのだろうか
力で押し勝てないことがわかると、後方に飛び、距離をとる
電柱を足場にして、上へと飛ぶ
吸血鬼もビルを足場にして、同じ高さまで飛び上がってくる
うっわー、ここまでついてくんのかよ
吸血鬼が斬撃を放つ
空中でそれに応戦し、二人で落ちる
隙を見て、相手から離れ、着地する
「はは、一般の吸血鬼でこれ？強すぎでしょ」
「そうかな？でも君も人間にしては強いんじゃない？」
黒髪の吸血鬼は朗らかに笑う
戦闘中とは思えない雰囲気である
相手は私のことを敵としてさえ見ていないだろう
彼はまだ余力を残しているように見える
……しかもこの子、フェリドと一緒に行動してたみたいなんだよなぁ
原作にはこんな子いなかった
まぁ、それは私や仲間たちもそうなんだけど
ここは既に、原作とは違う世界になってしまっている
……ま、別に殺してもいいか
相手は吸血鬼で敵だ
いちいち深く考える必要はない
そう思い、私は一歩踏み出す
吸血鬼との間合いを詰め、彼の額に呪符を貼る
そして命じる
「爆裂しろ、不動明王呪」
呪符が爆発する
辺りに砂埃が舞う
吸血鬼が遠くで着地したのが見えた
「えー、これ避けるの？」
思わず苦笑する
それに吸血鬼は笑った
「爆発が遅いよ、吸血鬼に対抗するならもっと……」
そこで、吸血鬼の声が止まる
足元を見る
彼の足元は凍り、地面に縫い付けられていた
朝桐の鬼の特殊能力だ
瞬間、難波の元気な声が戦場に響く
「隙あり〜！！」
自分の身長以上ある大剣を、吸血鬼目掛けて振り下ろす
吸血鬼は氷から抜け出そうとするが、動けない
吸血鬼はそれを見つめ、呟いた
「剣よ、血を吸え」
その言葉に、難波が笑う
吸血鬼が大剣に応戦する
ガッと金属音が鳴り響く
お互いの力は拮抗している
それに難波は笑った
「うっは〜、強いなおまえ！！」
「はは、それさっきも言われた」
吸血鬼が剣に更に力を込める
「うわっ、あはは！」
それに対応できず、難波の体が吹っ飛んだ
楽しそうで何よりだ
私は吸血鬼の背中に向けて、再度刀を振るう
それに吸血鬼は笑って言った
「弱いものいじめはんた〜い」
だがそれはあっさり防がれる
ピキリ、と足元から音がした
「げ」
「はは、もう遅いよ」
私の横腹目掛けて、蹴りが放たれた
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作者名：もちもち | 作成日時：2020年2月27日 0時
