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196話 ページ10

「死なないんだ。じゃあ、なにかいいことがあるよ」

すると優ちゃんは不貞腐れたように言った

「ないよ」

「あるよ」

「ない」

「はは、あるって。人生の先輩が言ってるんだ。誰かに出会ったり、なにか幸運に恵まれたり。そういうのは、最初のうちはとても楽しいからね」

最初のうちは

随分と含みのある言い方だ
それに突っ込むと後々痛い目にあうので、私は何も言わない

ミラー越しに、斎藤に微笑まれる

……そういうところが気にくわない

斎藤が言う

「百夜孤児院に行けば、君は仲間に会える」

「仲間なんていない」

「いるよ」

「いない!」

優ちゃんが声を荒げる

うるさい
少し静かにしてほしい

何をそんなにムキになっているんだか

「Aちゃんはどう?やっぱり不安?」

私は斎藤に視線を戻す
少し困ったように笑って、

「……はい、ちょっとだけ」

「あはは。まあ、すぐに慣れるよ。大丈夫だ」

そこで、斎藤は携帯を取り出す
相手はわからないが、おそらく、《百夜孤児院》の者だろう

電話が繋がったようだ

「やあ、院長先生」

予感は的中した
相手の声は、流石にここからでは聞き取れない

興味もないので、ぼんやりと外の景色を眺める

空は曇っている
こういう日はなんとなく、気分が悪い

斎藤の声が聞こえる

「たぶん、運命の子だ。僕が彼に送り込む、悪魔」

その言葉の意味は、理解できない

悪魔だと言ったり、そうじゃないと言ったり、コロコロ意見の変わるやつだ
やはりこいつは信用できない

そこで、音が聞こえた

ポツ。ポツポツポツ

斎藤が言う

「……おっと、雨だ」

すぐに雨足が強くなる

「これはいい。__________」

彼の呟きは雨音にかき消されて聞こえない
どうせ、ろくでもないことを呟いているに違いない

私はそう思いながら、外の景色を眺めていた

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きゃーぽん(プロフ) - 面白くて一気に読んでしまいました。こちらの作品の続編のタイトルはなんでしょうか? (2021年9月27日 19時) (レス) @page28 id: 0aee990b2e (このIDを非表示/違反報告)
コトノハ - 完結おめでとうございます!ですが19歳編、24歳編とまだまだ楽しみがいっぱいですね!そちらも更新待ってますので、お体に気をつけて頑張ってくださいね。 (2019年3月21日 0時) (レス) id: 611c145fdc (このIDを非表示/違反報告)
もちもち(プロフ) - みぃちゃん,mさん» ありがとうございます。続編もよろしくお願いします! (2019年1月26日 22時) (レス) id: 4bf1c586cf (このIDを非表示/違反報告)
みぃちゃん,m - とりあえずの完結ですね!お疲れ様でした!続編楽しみです!((o(。>ω<。)o)) (2019年1月23日 18時) (レス) id: c9db1120e8 (このIDを非表示/違反報告)
ゆきち(プロフ) - いつも読ませていただいてます!!更新頑張ってください! (2019年1月23日 1時) (レス) id: 4456c6b735 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:もちもち | 作成日時:2018年12月8日 9時

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