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191話 ページ5

その鎌を、半眼で見つめる
そして責めるように言った

「あれ、もう私、持ってるじゃないですか」

《はは。なにせ私たちは、生まれた時から混じってるからねぇ》

確かにこの鎌を持った時、違和感はまるでなかった
元からこの鎌はここにあったかのように、手に収まっていた

そこでふと、思い出した

それは幼い頃に見た、夢のこと
悪夢のことだ

ある時から夜な夜な、美しい鬼に話しかけられる夢を見るようになった

それを真昼姉さんに話すと、彼女は酷く慌てた
そしてその話を誰にもしないように、強く言われたのを覚えている

おまけにそれがバレないよう、一緒に訓練までした
他者に心が読み取られないよう、鏡に映して笑顔の練習までした

それはなぜか?

「……私を、守るため?」

自分はかつて、鬼と混じっていた
そしてそれが他者にバレないよう、真昼姉さんに守ってもらっていた

じゃあ、

「………」

と、目の前を見る
するとそこには、いつのまにか鬼が立っていた

ツノの生えた、若い男だった
歳の頃は、二十五、六歳に見える

そいつは、子供の頃に夢の中で声をかけてきた鬼だった

「ああ、思い出した。あれはあなただ」

すると美しい鬼が笑ってこちらを見た

《やあ、久しぶり》

私は呟く

「姉さんが、私を実験から守った」

鬼は微笑む

「姉さんがいなければ、今頃私はモルモットだ」

だがそうはならなかった

天才は姉だ
スターは姉だ

全ての注目が、姉に集まっていた

そうなるよう、姉は振舞っていた

「まさか、私を庇って、姉さんが一人でモルモット役を買って出たの?」

すると鬼は笑った

《お、やっと君の中に小さな欲望が生まれたよ》

「そんな話はしていない。あなたは知ってるんでしょう?なぜ、あなたは私から離れていたの?」

その問いに、鬼は答えた

《柊真昼が一度、君から私を切り離して、自分の中に取り込んだんだ》

自分の知らないところで姉が、自分のために犠牲になっていた

その事実に、私は動けなくなったのを感じた

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きゃーぽん(プロフ) - 面白くて一気に読んでしまいました。こちらの作品の続編のタイトルはなんでしょうか? (2021年9月27日 19時) (レス) @page28 id: 0aee990b2e (このIDを非表示/違反報告)
コトノハ - 完結おめでとうございます!ですが19歳編、24歳編とまだまだ楽しみがいっぱいですね!そちらも更新待ってますので、お体に気をつけて頑張ってくださいね。 (2019年3月21日 0時) (レス) id: 611c145fdc (このIDを非表示/違反報告)
もちもち(プロフ) - みぃちゃん,mさん» ありがとうございます。続編もよろしくお願いします! (2019年1月26日 22時) (レス) id: 4bf1c586cf (このIDを非表示/違反報告)
みぃちゃん,m - とりあえずの完結ですね!お疲れ様でした!続編楽しみです!((o(。>ω<。)o)) (2019年1月23日 18時) (レス) id: c9db1120e8 (このIDを非表示/違反報告)
ゆきち(プロフ) - いつも読ませていただいてます!!更新頑張ってください! (2019年1月23日 1時) (レス) id: 4456c6b735 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:もちもち | 作成日時:2018年12月8日 9時

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