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212話 ページ26

通話を切り、携帯を地面に落とす
そしてそれを、刀で突き刺す

バキリ、という音がして、簡単に携帯は壊れる

それを見ていた真昼姉さんが笑う

「私、まだ死んでないんだけどなぁ」

「……けど、取引は成立した」

「そうね」

彼女はそう言って、私の刀を手に取る

「ああ、たくさんたくさん、人と鬼を殺してきたわねぇ」

私は言った

「真昼姉さん」

「なあに、A」

「……ごめんね」

「ふふ、なんであなたが謝るの?あなたはお父様の命令に従っただけでしょう?」

それから彼女は刀を翻し、それを自分の胸に刺した
刀が刺さったのは、心臓の位置だ

「かぷっ」

空気の抜ける音

彼女は膝から崩れ落ちる
体を床に打ち付けないよう、彼女を支える

彼女はそれに、微笑む

「…………………ああ、Aって、こんなに温かったのね」

彼女の胸で、ノ夜が脈打っているのを感じる
呪詛が、彼女の体を汚染していく

はぁ、はぁ、はぁ、と彼女は苦しそうに息を漏らす

「……ごめんなさい」

それに彼女は、やはり微笑む

「謝らないで。あなたのせいじゃない。生まれた時から、そう決められてたんだから」

そういう計画なのだ
最初から、そう決められていた

「……泣かないで、A」

そこで初めて、自分が泣いていることに気づく
ポタリと、彼女の頰に、雫が落ちる

「私のために泣いてくれてるのね、嬉しい」

「………」

喉が震えて、声が出ない
何を言えばいいのか、わからない

彼女はそんな私を見透かすように、私の涙を拭う

「シノアのこと、よろしくね」

「うん」

「グレンのことも、よろしくね」

「うん」

「あなたのこと、本当に愛していたわ」

「……私もだよ、真昼姉さん」

彼女は泣いていた

「ああ、グレンに会いたいなぁ」

赤く美しかった瞳も、呪いで真っ黒に染まっている
がくがくと、彼女の体が痙攣し始める

「真昼姉さん」

「…………」

彼女はもう、答えない

ず、ずずずずと、邪鬼が音を立て始めた
彼女の胸を引き込み始める

彼女の体を、刀の中に引きずり込もうとしている

真昼姉さんには、呪いがかけられていた
彼女は鬼になる

邪鬼を取り込んで、鬼になる

《止めてよ、A》

《助けてよ、A》

鬼たちが悲痛な声で言う
だが、私は答えない

ただ、真昼姉さんを見つめる

《だめだ、僕は、こんな》

《嫌だ、嫌だ、A!》

そこで、声が聞こえなくなる
真昼姉さんの姿が、消えてなくなる

床に、刀が落ちる

部屋を、静寂が包んだ

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きゃーぽん(プロフ) - 面白くて一気に読んでしまいました。こちらの作品の続編のタイトルはなんでしょうか? (2021年9月27日 19時) (レス) @page28 id: 0aee990b2e (このIDを非表示/違反報告)
コトノハ - 完結おめでとうございます!ですが19歳編、24歳編とまだまだ楽しみがいっぱいですね!そちらも更新待ってますので、お体に気をつけて頑張ってくださいね。 (2019年3月21日 0時) (レス) id: 611c145fdc (このIDを非表示/違反報告)
もちもち(プロフ) - みぃちゃん,mさん» ありがとうございます。続編もよろしくお願いします! (2019年1月26日 22時) (レス) id: 4bf1c586cf (このIDを非表示/違反報告)
みぃちゃん,m - とりあえずの完結ですね!お疲れ様でした!続編楽しみです!((o(。>ω<。)o)) (2019年1月23日 18時) (レス) id: c9db1120e8 (このIDを非表示/違反報告)
ゆきち(プロフ) - いつも読ませていただいてます!!更新頑張ってください! (2019年1月23日 1時) (レス) id: 4456c6b735 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:もちもち | 作成日時:2018年12月8日 9時

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