204話 ページ18
十二月二十五日
クリスマス
十八時二十分
ちらちらと雪が降り始めている
「すごい。ホワイトクリスマスだ」
車を止めて、斎藤はフロントガラス越しに空を見上げて呟いた
だが、誰もそれには反応しない
斎藤がこちらを振り向く
私より、隣に座っている優ちゃんを見ているようだ
優ちゃんは膝を抱えて、顔を埋めている
まるで世界を拒絶しているかのように
……そんなに嫌なら、とっとと死ねば良かったのに
まるで悲劇の主人公気取りだ
反吐がでる
だが、それを表情に出さず、いつものように笑っておく
そんな私たちを見て、斎藤は肩を竦めた
車を降りる
『百夜孤児院』に着いたらしい
斎藤は優ちゃんの方へと移動する
優ちゃんは窓越しに彼を見て、
「……っ！」
ガシャンッと、内側から車の鍵を閉めてしまう
それに斎藤は苦笑する
ポケットに手を入れて、キー操作で鍵をあける
ガシャ
すると優ちゃんは、また慌てて扉の鍵を閉めた
ガシャン
ガシャ
ガシャン
ガシャ
と、地味な攻防が始まる
私はそれを呆れた気持ちで眺めていると、
「もぉ〜」
斎藤が鍵を開けた瞬間、扉も開けた
優ちゃんがそれに、
「あっ」
声を上げる
斎藤は微笑む
「降りて。ついたよ」
「………」
地味な攻防は呆気なく終わった
斎藤は言う
「早く。雪で凍えちゃうよ」
「………」
「あとマフラーね。ちゃんと巻かないと、風邪引いちゃう」
優ちゃんは無視する
斎藤が彼のマフラーを巻き直そうとすると、
「触るんじゃない！」
と怒鳴って殴りかかるが、斎藤は気にしない
もう慣れたのだろう
胸を殴られながら、マフラーを首に巻き直している
それから彼は優ちゃんの腕を掴む
「おい、離せ！」
無視して、席から優ちゃんを引きずり出す
そして私に向けて笑みを浮かべた
「早く君も出て」
「………」
私は素直に車から降りる
車の中と違い、外は寒い
「離せ！」
優ちゃんはまだ暴れている
それに斎藤は微笑み、
「はいはい。言われなくても離しますよ。なんせ、今日からここが君の家なんだからね」
斎藤は車の扉を閉める
優ちゃんが怒鳴る
「俺に家なんかねぇんだよ！」
だからうるさい
だが、私は困ったように笑うだけで、何も言わない
何を言ったって、どうせ無駄だからだ
斎藤は言う
「ま、派手に家が燃えちゃったからねぇ〜。おまけに君は、両親に殺された嫌われ者」
……なぜ事態を悪化させるんだ
それに私は、やはり困ったような笑みを浮かべた
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きゃーぽん(プロフ) - 面白くて一気に読んでしまいました。こちらの作品の続編のタイトルはなんでしょうか？ (2021年9月27日 19時) (
レス) @page28 id: 0aee990b2e (このIDを非表示/違反報告)
コトノハ - 完結おめでとうございます！ですが19歳編、24歳編とまだまだ楽しみがいっぱいですね！そちらも更新待ってますので、お体に気をつけて頑張ってくださいね。 (2019年3月21日 0時) (レス) id: 611c145fdc (このIDを非表示/違反報告)
もちもち(プロフ) - みぃちゃん，ｍさん» ありがとうございます。続編もよろしくお願いします！ (2019年1月26日 22時) (レス) id: 4bf1c586cf (このIDを非表示/違反報告)
みぃちゃん,ｍ - とりあえずの完結ですね！お疲れ様でした！続編楽しみです！((o(｡>ω<｡)o)) (2019年1月23日 18時) (レス) id: c9db1120e8 (このIDを非表示/違反報告)
ゆきち(プロフ) - いつも読ませていただいてます！！更新頑張ってください！ (2019年1月23日 1時) (レス) id: 4456c6b735 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：もちもち | 作成日時：2018年12月8日 9時
