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197話 ページ11

場所は第一渋谷高校

この場所での交戦は、既に一日以上続いていた
太陽が傾き、空が真っ赤に染まっていく

日が、暮れようとしている

その演習場の中心で、俺は腹違いの妹に首を掴まれ、無理矢理立たされている

全身に力が入らない

脳と左目が損傷している
そちらの修復に回さないと、もう動くことすらできない

「………」

残った右目で、俺は妹を見つめる

満身創痍な俺に対し、彼女は息一つ乱れていない

やはり彼女は天才だ
俺には到底敵いそうにない

これで半分血が繋がっているというのなら、それは、

「……不平等だろ」

ぼんやりとした意識で、呟く
すると彼女は共感するような顔で頷く

「本当にね。私も普通の女の子に生まれて、恋とかしたかったのに……本当に不平等」

彼女は本当にそう言っているようだった

頰に、冷たい雫がぽつんと落ちる

雨だ

すぐに雨足が強くなった
土砂降りだ

全身を汚していた血を、雨が洗い流してくれる

俺は真昼を見つめて、言った

「……殺せ」

「そんなにあっさり諦めたら、またお父様に怒られるわよ」

「……はっ、おまえは怒られたことがあるのか?」

「ないけど」

あっさり言ってくれる

ずっと比べられてきた
どの試験でも、常に彼女の方が高い成績を出した

どれだけ努力しても、彼女を超えることはできなかった

嫉妬はしなかった
彼女の方が優秀ならば、彼女が『柊』を継げばいい

そう、思っていた

「………」

左目の修復が終わる
両目を見開き、美しい妹を見る

「どうせ俺は、おまえにはもう勝てない」

「ふふ、潰れた目が治っちゃうなんて、もうあなたも人間じゃないわねぇ」

「《黒鬼》だ。現在、人間が使える最高位の強さを持った鬼」

「《雷鳴鬼》ね」

よく知っているという顔
彼女はいつだって、なんでも知っている

「さすが兄さん。彼を屈服させるのは大変だったでしょう。どれくらい人間性を残せた?」

「人間をやめてさえ、おまえには追いつかなかったよ」

「っていう兄さんには珍しい愚痴は、時間稼ぎなんでしょ?」

もちろんそうだ

彼女の動きを止めている間に、俺たちを囲むようにして、二百の狙撃手を用意する手はずになっていた

彼女は笑う

「演技が下手すぎるよ、兄さん」

だが、別に演技ではなかった
彼女に心が屈しているのは本当だ

しかし、それをここで説明する必要はなかった

なぜならもう、

「時間稼ぎは終わった。下手な演技で十分だったな」

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きゃーぽん(プロフ) - 面白くて一気に読んでしまいました。こちらの作品の続編のタイトルはなんでしょうか? (2021年9月27日 19時) (レス) @page28 id: 0aee990b2e (このIDを非表示/違反報告)
コトノハ - 完結おめでとうございます!ですが19歳編、24歳編とまだまだ楽しみがいっぱいですね!そちらも更新待ってますので、お体に気をつけて頑張ってくださいね。 (2019年3月21日 0時) (レス) id: 611c145fdc (このIDを非表示/違反報告)
もちもち(プロフ) - みぃちゃん,mさん» ありがとうございます。続編もよろしくお願いします! (2019年1月26日 22時) (レス) id: 4bf1c586cf (このIDを非表示/違反報告)
みぃちゃん,m - とりあえずの完結ですね!お疲れ様でした!続編楽しみです!((o(。>ω<。)o)) (2019年1月23日 18時) (レス) id: c9db1120e8 (このIDを非表示/違反報告)
ゆきち(プロフ) - いつも読ませていただいてます!!更新頑張ってください! (2019年1月23日 1時) (レス) id: 4456c6b735 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:もちもち | 作成日時:2018年12月8日 9時

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