それでも何も変わらないのだと、私は思い込んでいたんだ。 ページ49
翌朝。
俄に外が騒がしくなり、私は目を覚ました。
「ふあぁぁあ……って、あれ?」
起き上がって周囲を見るけれど、昨晩も私の隣で寝たはずの兵助と勘右衛門がいない。
押し入れを開けると綺麗に畳まれた布団が二人分入っている。
……私、寝過ごしたっ!?
今日は朝から授業のある日だ。
どれくらい寝ていたかはわからないけれど、遅刻してはまずい。
慌てて着替えて部屋を飛び出すと、ちょうどこちらに歩いて来ていた誰かとぶつかった。
「へぶっ!」
「A!?」
ドンッと尻餅をつくと、目の前にぬっと大きな手が差し出される。
勘右衛門の手だ。
「ごめん、大丈夫か?」
「う、うん」
掴んだ手をぐいっと引かれ、私は勘右衛門にしがみつくようにして立ち上がった。
「で、Aはどうしたんだ? そんなに慌てて」
珍しいな、と勘右衛門が笑う。
「起きたら、二人がいないから」
「え? それで寂しかったのか?」
からかうようにケラケラと言われ、私はムッと眉間に皺を寄せた。
「違う。起きたら二人がいないから、寝過ごしたのかと思って」
いつもは私が起こしてもなかなか布団から出ようとしない二人が起きていたから、焦ったのだ。
そう言い訳をする私の頭を、勘右衛門がポンポンと軽く叩いた。
ごめんな、と困ったように微笑んだ後、彼はスッと顔を真面目なものに変える。
「そのことで、Aを呼びに来たんだ。学園長先生が庵でお待ちだから」
この小説の続きへ→←スリルとサスペンスゥ (2022.2.28改稿)
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冴川冬香(プロフ) - 白狐さん» いつもコメントありがとうございます。お返事が遅くなってしまいすみません……。白狐さんの褒めてくださるポイントは全て私が気に入っているところなので、毎回コメントをいただく度ににこにこしています。これからも楽しんでいただけると幸いです(*^▽^*) (2022年3月2日 21時) (レス) id: 33f8ec8fc5 (このIDを非表示/違反報告)
白狐 - 今年も冴川さんのペースで更新頑張ってください! 応援してます! (2022年1月16日 21時) (レス) id: 06e1d35d87 (このIDを非表示/違反報告)
白狐 - あけましておめでとうございます そして、たくさんの更新ありがとうございます! お説教の段でこっそり逃げようとしても逃げられないシーン大好きです! あと、スリルとサスペンスゥの段の伊作先輩キュンキュンしました! (2022年1月16日 21時) (レス) @page49 id: 06e1d35d87 (このIDを非表示/違反報告)
冴川冬香(プロフ) - 白狐さん» いつもコメントありがとうございます。言ってくださる感想のポイントが私のお気に入りな部分ばかりで毎回にこにこしております。 Twitterの方も見てくださっているですと……!?絵も褒めていただけて嬉しいです。ありがとうございます! (2021年11月27日 12時) (レス) id: 33f8ec8fc5 (このIDを非表示/違反報告)
白狐 - Twitterも私アカウント持ってないのでフォローできてないんですけど、見させてもらってます! 絵上手ですね あと、夢垢の小説も面白いです! (2021年11月14日 20時) (レス) id: d2923587f7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:冴川冬香 | 作成日時:2021年2月7日 17時