お説教 ページ46
「で、善法寺君?」
無慈悲にも私を置いて去っていくくの一教室の女の子達を見送ったシナ先生が深い溜息と共に呼んだのは、伊作先輩だった。
「ここ、一応男子禁制なのだけれど」
「……すみません」
弁解の仕様がない、と言わんばかりに項垂れる先輩。
その頭頂部に向かって、シナ先生は今日何度目かわからない溜息を吐く。
「せめて事前に私に連絡をしておくとか、方法はあるでしょう? Aちゃんを迎えに来たのだろうと私が気づいたから良かったものの、そうでなければ……」
……あれ? 伊作先輩が来たのって、シナ先生の策略じゃなかったんだ。
つらつらとお小言を並べる先生に、私は軽く目を瞬いた。
シナ先生が呼んだのではなかったのか。
てっきり二人まとめて私にお説教するものだと……。
……ん? 待てよ。今のうちに逃げた方が良くない?
何について怒られるのか心当たりがありすぎて逆にわからなくなっているけれど、伊作先輩がシナ先生に怒られている今が好機だろう。
これを逃せば、きっと怪我をしたことで伊作先輩に怒られ、シナ先生にも理由はわからないけれど怒られるはずだ。
私は息を整えると、ゆっくりと後ろに右足を下げる。
二人に気づいた様子はない。
更に一歩、左足も下げた。
……いざ、お説教回避━━っ!
「Aちゃん?」
底冷えするような声と共に、シナ先生がぎゅるんと首をこちらに向けた。
「はい?」
あくまで冷静に、何でもない風に私は綺麗な笑顔を作って返事をする。
「Aちゃん?」
「……はい」
逃げられませんでした。
シナ先生を纏う空気の温度が急下降したのを感じ、私はひぅっと息を呑む。
後ろで伊作先輩が肩を小さく震わせているのが見えた。
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冴川冬香(プロフ) - 白狐さん» いつもコメントありがとうございます。お返事が遅くなってしまいすみません……。白狐さんの褒めてくださるポイントは全て私が気に入っているところなので、毎回コメントをいただく度ににこにこしています。これからも楽しんでいただけると幸いです(*^▽^*) (2022年3月2日 21時) (レス) id: 33f8ec8fc5 (このIDを非表示/違反報告)
白狐 - 今年も冴川さんのペースで更新頑張ってください! 応援してます! (2022年1月16日 21時) (レス) id: 06e1d35d87 (このIDを非表示/違反報告)
白狐 - あけましておめでとうございます そして、たくさんの更新ありがとうございます! お説教の段でこっそり逃げようとしても逃げられないシーン大好きです! あと、スリルとサスペンスゥの段の伊作先輩キュンキュンしました! (2022年1月16日 21時) (レス) @page49 id: 06e1d35d87 (このIDを非表示/違反報告)
冴川冬香(プロフ) - 白狐さん» いつもコメントありがとうございます。言ってくださる感想のポイントが私のお気に入りな部分ばかりで毎回にこにこしております。 Twitterの方も見てくださっているですと……!?絵も褒めていただけて嬉しいです。ありがとうございます! (2021年11月27日 12時) (レス) id: 33f8ec8fc5 (このIDを非表示/違反報告)
白狐 - Twitterも私アカウント持ってないのでフォローできてないんですけど、見させてもらってます! 絵上手ですね あと、夢垢の小説も面白いです! (2021年11月14日 20時) (レス) id: d2923587f7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:冴川冬香 | 作成日時:2021年2月7日 17時