つまんないの ページ45
シナ先生とのんびり話しながらお湯に浸かっていると、先に出て着替えていた女の子達が慌てたようにパタパタと浴室に入ってきた。
「何です、貴女達。忍びたるものどんな時でも冷静に……」
「すみません、シナ先生」
「ですが、外に、その、善法寺先輩が」
シナ先生の言葉を遮ってまで報告する、彼女達の伝えたかった内容。
それは男子禁制のくの一長屋での、伊作先輩の存在。
いくら伊作先輩でも、くの一長屋への侵入は許され難いことだろう。
だが、冷や汗を垂らして顔色を伺う私達を、シナ先生は笑顔で一蹴する。
「そろそろ上がりましょうか、Aちゃん」
「は、はい……?」
「お迎え、来たみたいよ?」
何がなんだかわからないまま、シナ先生に急かされて服を着ると、風呂場を出た。
辺りを見回すと、少し離れたところで苦無を構えた臨戦態勢のくの一達に囲まれて、困ったように眉尻を下げる伊作先輩がいた。
「貴女達。下ろしなさい」
「え? ですが……」
侵入者なのに。そう言いたげな彼女達に、シナ先生はもう一度下ろすよう指示する。
腑に落ちない様子で苦無をしまったくの一達は、説明を求めるように先生を見た。
「連絡ができていなくてごめんなさいね。善法寺君はいいの。Aちゃんを迎えに来るように私が頼んだのだから」
……え? 先生が頼んだの? 何で?
きょとんと首を傾げると、シナ先生は残念なものを見るような目で私を一瞥し、パンパンと手を叩いた。
「はい、貴女達は解散。私はこの二人に話があるから、先に帰っていてちょうだい」
えー、つまんないの。
背中でそう語りつつ、くの一達はばらばらと散っていく。
後に残ったのは、うっすらと冷気を漂わせながら微笑む二人のみ。怖い。何言われるかわかんなくて怖い。
……待って! 私を一人にしないでぇっ!
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冴川冬香(プロフ) - 白狐さん» いつもコメントありがとうございます。お返事が遅くなってしまいすみません……。白狐さんの褒めてくださるポイントは全て私が気に入っているところなので、毎回コメントをいただく度ににこにこしています。これからも楽しんでいただけると幸いです(*^▽^*) (2022年3月2日 21時) (レス) id: 33f8ec8fc5 (このIDを非表示/違反報告)
白狐 - 今年も冴川さんのペースで更新頑張ってください! 応援してます! (2022年1月16日 21時) (レス) id: 06e1d35d87 (このIDを非表示/違反報告)
白狐 - あけましておめでとうございます そして、たくさんの更新ありがとうございます! お説教の段でこっそり逃げようとしても逃げられないシーン大好きです! あと、スリルとサスペンスゥの段の伊作先輩キュンキュンしました! (2022年1月16日 21時) (レス) @page49 id: 06e1d35d87 (このIDを非表示/違反報告)
冴川冬香(プロフ) - 白狐さん» いつもコメントありがとうございます。言ってくださる感想のポイントが私のお気に入りな部分ばかりで毎回にこにこしております。 Twitterの方も見てくださっているですと……!?絵も褒めていただけて嬉しいです。ありがとうございます! (2021年11月27日 12時) (レス) id: 33f8ec8fc5 (このIDを非表示/違反報告)
白狐 - Twitterも私アカウント持ってないのでフォローできてないんですけど、見させてもらってます! 絵上手ですね あと、夢垢の小説も面白いです! (2021年11月14日 20時) (レス) id: d2923587f7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:冴川冬香 | 作成日時:2021年2月7日 17時