守りたいモノ ページ5
「まぁ、俺も合流できそうならそうするから。……その、頼むぞ」
私の問いに、食満先輩がちらちらと背後を気にしながら言う。
その先には、風に靡くふわふわとした長い赤毛。
……食満先輩、やっぱり後輩が可愛いんだね。
「わかりました。保健委員の皆も作兵衛も、私が丸ごと守ります」
クスクスと笑ってそう言うと、食満先輩は少し恥ずかしそうに顔を赤らめて、明後日の方を向いた。
「それじゃあ、そろそろ行こうか」
門の外まで出て見送ってくれる食満先輩に皆で大きく手を振って、私たちは出発する。
先頭には道を知っている伊作先輩。
その後ろに一年生二人、三年生の二人が続き、最後尾に私と左近が並ぶ。
こうしておけば、何かあった時に私がすぐに気がつけるのだ。
「ねぇ、左近。今日採る薬草って、どんなのなの?」
それぞれが仲良さそうに話しているのに私たちだけ無言というのも気まずく、とりあえず無難な質問をする。
「今日は四種類採る予定です。腹痛に効く薬が残り僅かなので、それの材料が主ですね。
学園の薬草園にない薬草で、前は遠くまで採りに行かないといけなかったんですけど、今回伊作先輩が近場で生えてるところを見つけてくださったので、だいぶ楽になりました」
淡々とした声で話す左近だが、その口元には笑みが浮かんでいる。
「良かったね、左近」
「はい!」
私の言葉に顔を上げて、左近は笑顔で頷く。
「遠くに行っていた時は、危ないからって数馬先輩しか連れて行ってくださらなかったんです。
でも、危ないのなら先輩たちにも行ってほしくはなかったし、できることなら僕も手伝いたかった。
二人じゃ危険でも、三人ならなんとかなるかもしれないじゃないですか」
しっかりと私を見つめて言った左近は、ハッとしたように目を開いた。
「あ、いやその、一緒に行ったらもっと沢山薬草について学べるって思っただけですから!
別にそんな、心配してたとか、そんなんじゃ……」
慌てたように弁解し始める左近を、はいはいと言って宥める。
ふと顔を上げると、前を歩く数馬の耳が少し赤くなっていた。
その先にいる穏やかに微笑んだ伊作先輩と目が合い、私は思わず笑い返す。
「そろそろ着くよ! もう少しだから頑張ろう」
私を見て驚いたように目を見開いた伊作先輩が、誤魔化すように言う。
少し先には、薬草が茂る原っぱが見えた。
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冴川冬香(プロフ) - 白狐さん» いつもコメントありがとうございます。お返事が遅くなってしまいすみません……。白狐さんの褒めてくださるポイントは全て私が気に入っているところなので、毎回コメントをいただく度ににこにこしています。これからも楽しんでいただけると幸いです(*^▽^*) (2022年3月2日 21時) (レス) id: 33f8ec8fc5 (このIDを非表示/違反報告)
白狐 - 今年も冴川さんのペースで更新頑張ってください! 応援してます! (2022年1月16日 21時) (レス) id: 06e1d35d87 (このIDを非表示/違反報告)
白狐 - あけましておめでとうございます そして、たくさんの更新ありがとうございます! お説教の段でこっそり逃げようとしても逃げられないシーン大好きです! あと、スリルとサスペンスゥの段の伊作先輩キュンキュンしました! (2022年1月16日 21時) (レス) @page49 id: 06e1d35d87 (このIDを非表示/違反報告)
冴川冬香(プロフ) - 白狐さん» いつもコメントありがとうございます。言ってくださる感想のポイントが私のお気に入りな部分ばかりで毎回にこにこしております。 Twitterの方も見てくださっているですと……!?絵も褒めていただけて嬉しいです。ありがとうございます! (2021年11月27日 12時) (レス) id: 33f8ec8fc5 (このIDを非表示/違反報告)
白狐 - Twitterも私アカウント持ってないのでフォローできてないんですけど、見させてもらってます! 絵上手ですね あと、夢垢の小説も面白いです! (2021年11月14日 20時) (レス) id: d2923587f7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:冴川冬香 | 作成日時:2021年2月7日 17時