三反田数馬 もういない ページ23
「走れ! 走るんだ!」
後輩たちの手を取り、僕は叫ぶ。
すぐ近くでドタドタと複数の足音が聞こえる。
先輩たちはもういない。
──僕が皆を守らないと。
.
保健委員とA先輩、作兵衛の七人で薬草採りに来た結果、いつもの不運が発動しました。
本当にいつも通り。
いい加減に嫌になってくる。
何で僕たちばかりこんな目に。
低い声と共にやってきた盗賊たちを見て、僕は小さく溜息を吐いた。
『先に行って! 私は大丈夫だから!』
そう言ってせっかくA先輩が僕たちを逃してくれたのに、僕が途中で転んだせいで結局追いつかれてしまった。
『数馬! ここは僕がなんとかするから、乱太郎たちのことを頼むよ!』
次々と森の奥から現れる男たちを片手でいなしつつ、僕に伊作先輩はそう言った。
こうなってしまったのは僕のせいだ。
だから、何としてでも乱太郎たちを守らないと。
「……ま、数馬。おいっ、数馬!」
「えっ? あ、あぁごめん。何?」
ふと気がつくと、作兵衛が腕を掴んで僕を呼んでいた。
「なぁ数馬、お前一人で何とかしようと思ってるだろ」
パッと腕を離した作兵衛が、前を歩きながらそう言う。
「どうせ、こうなったのは自分のせい、とか思ってるんだろ?」
作兵衛の足元の辺りをじっと見つめて何も答えない僕に、作兵衛が柔らかく笑いながら言う。
「だって、僕が転んだからじゃないか。僕が、僕たちが不運だから……」
「違う」
僕の言葉を遮って、作兵衛が強く、はっきりとした声で言った。
「今日こんなことになっているのは、お前たちのせいなんかじゃない。あんな人数で襲ってきた奴らが悪いんだ」
だから気にするな。前を向け。
そう言うと、な? と僕に手を差し伸べてくれる。
「……うん。そうだね」
乱太郎たちを守るためにも、作兵衛と二人で協力しないと。
そう思ってその手を取った時。
ドオォォンッという爆発音がした。
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冴川冬香(プロフ) - 白狐さん» いつもコメントありがとうございます。お返事が遅くなってしまいすみません……。白狐さんの褒めてくださるポイントは全て私が気に入っているところなので、毎回コメントをいただく度ににこにこしています。これからも楽しんでいただけると幸いです(*^▽^*) (2022年3月2日 21時) (レス) id: 33f8ec8fc5 (このIDを非表示/違反報告)
白狐 - 今年も冴川さんのペースで更新頑張ってください! 応援してます! (2022年1月16日 21時) (レス) id: 06e1d35d87 (このIDを非表示/違反報告)
白狐 - あけましておめでとうございます そして、たくさんの更新ありがとうございます! お説教の段でこっそり逃げようとしても逃げられないシーン大好きです! あと、スリルとサスペンスゥの段の伊作先輩キュンキュンしました! (2022年1月16日 21時) (レス) @page49 id: 06e1d35d87 (このIDを非表示/違反報告)
冴川冬香(プロフ) - 白狐さん» いつもコメントありがとうございます。言ってくださる感想のポイントが私のお気に入りな部分ばかりで毎回にこにこしております。 Twitterの方も見てくださっているですと……!?絵も褒めていただけて嬉しいです。ありがとうございます! (2021年11月27日 12時) (レス) id: 33f8ec8fc5 (このIDを非表示/違反報告)
白狐 - Twitterも私アカウント持ってないのでフォローできてないんですけど、見させてもらってます! 絵上手ですね あと、夢垢の小説も面白いです! (2021年11月14日 20時) (レス) id: d2923587f7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:冴川冬香 | 作成日時:2021年2月7日 17時