それでも私は山田家の娘III【伊作編】

約束を ページ22

乱太郎たちを学園に帰そうとした矢先、ダミ声と共に前方から男たちが現れた。

さっきとはまた別の奴らだ。



「せ、先輩……」



乱太郎と伏木蔵が怯えたように伊作先輩の背後に隠れる。




「逃がさんようにって言われてるんでねぇ」




観念して捕まるんだな、と近寄ってくる男たちから後輩を守るように伊作先輩が身構えた。



「残念ですが、それはできない相談ですね」



一旦偽者(仮)から離れ、懐から苦無を出しながら伊作先輩の前に飛ぶ。


そのまま威嚇するように苦無で大きな円を描いた。



「うおっ！？」



男たちは慌てたように二、三歩下がって苦無を避ける。

進むべき道が開けたのを見て、私は伊作先輩の方を振り向いた。



「さあ先へ！」

「あ、あぁ」



行くよ、と乱太郎たちの手を引く伊作先輩は、一度不安そうに私を見る。



「大丈夫です。どこにいても必ず行きます。どんな伊作先輩でも、必ず見つけだしますから」

「でも……」

「でしたら、裏山の一本松で待ち合わせにしましょう。絶対無事に、そこまで辿り着いてくださいね」



約束ですよ、と囁くと、私はトンッと先輩の背中を押した。



「さぁ、行ってください！」



私は男たちの方を向いて苦無を構えた。

じりじりと睨み合って、互いの様子を窺う。



「おりゃあっ！」



先に動いたのは、男の方だった。

短刀を握り締めた右手を勢いよく突き出してくる。


私がそれを避けたのを合図に、一斉に男たちは動き始めた。









キンッ！ カンッ！ カキンッ！


森の中を高い金属音が響く。

一人一人は大した強さでないのだけれど、何せ量が多い。

右から来た男を避けたと思ったら、次はその男の陰からまた攻撃がくる。

背後からの攻撃をかわしたら、今度は真上から降ってくる──。


倒しても倒しても敵は増えるばかりで、そろそろうんざりしてくる。

しかも、少しずつ強いやつが来始めている……気がする。



……ちょっと、まずいかなぁ……？



この様子では、おそらく伊作先輩たちの方にも行っているだろう。

流石に私だけでは無理だ。




私のままじゃダメだ。




私はフッと笑うと、懐から焙烙火矢を取り出して火をつけた。

二つは男たちの方へ投げ──




────残りの一つは真上に投げ上げた。

三反田数馬　もういない→←偽者（仮）

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