哀車の術 ページ16
勘弁してくれ、と言わんばかりに作兵衛が首を振って言った。
それを聞いて、今の今まで俯いていた乱太郎はパッと笑顔になって顔を上げた。
「もちろんです!」
「……え? 哀車の術?」
「ですかね」
乱太郎のあまりの変わりように、私は困惑の声を上げる。
「アイシャノジュツ……って何ですか? まだ習ってないのでわかりま」
「五車の術のうちの一つだよ。一年生の今の時期ならもう習ってるだろ?」
一年は組のいつものお決まりのセリフを言う乱太郎に被せるように、左近が冷ややかな目をして言った。
「伏木蔵、もう習った?」
「だいぶ前に習ったよ。確か、喜車の術、怒車の術、哀車の術、楽車の術、恐車の術の五つで、それぞれ相手を喜ばせる、怒らせる、悲しませる、楽しませる、怖がらせることで相手から必要な情報を得る術……でしたよね」
「だいたい合ってるよ。伏木蔵はよく勉強してるね」
ほぼ完璧な解答をした伏木蔵の頭を伊作先輩が撫でる。
「……あれ? 習ったかなぁ……」
おかしいぞ? と首を傾げている乱太郎の頭をそっと撫でる。
少しでも賢くなって、兄上の胃痛をマシにしてあげてね。
「らーんららんらんらーん。らーんらららーんらら」
気を取り直して。
私たちはそれぞれ手を繋ぎ、包帯の歌を歌っていた。
照れてやらないかと思われた三年生二人も、楽しそうに繋いだ手を振って……。
あ、違う。
数馬が振ってるだけで、作兵衛は楽しそうじゃないや。
すごくわかりやすい仏頂面だね。
顔真っ赤だけど。
まぁ恥ずかしがっているだけで嫌がってるわけじゃなさそうだしいいか。
ちなみに私と手を繋いでいる左近くんは、と下を見ると。
同じく真っ赤な仏頂面で俯きながら歌ってらっしゃいました。
流石思春期。
年上に逆らってみたい年頃なんだよね。
お姉ちゃんはわかるよ。
うんうん。
67人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
冴川冬香(プロフ) - 白狐さん» いつもコメントありがとうございます。お返事が遅くなってしまいすみません……。白狐さんの褒めてくださるポイントは全て私が気に入っているところなので、毎回コメントをいただく度ににこにこしています。これからも楽しんでいただけると幸いです(*^▽^*) (2022年3月2日 21時) (レス) id: 33f8ec8fc5 (このIDを非表示/違反報告)
白狐 - 今年も冴川さんのペースで更新頑張ってください! 応援してます! (2022年1月16日 21時) (レス) id: 06e1d35d87 (このIDを非表示/違反報告)
白狐 - あけましておめでとうございます そして、たくさんの更新ありがとうございます! お説教の段でこっそり逃げようとしても逃げられないシーン大好きです! あと、スリルとサスペンスゥの段の伊作先輩キュンキュンしました! (2022年1月16日 21時) (レス) @page49 id: 06e1d35d87 (このIDを非表示/違反報告)
冴川冬香(プロフ) - 白狐さん» いつもコメントありがとうございます。言ってくださる感想のポイントが私のお気に入りな部分ばかりで毎回にこにこしております。 Twitterの方も見てくださっているですと……!?絵も褒めていただけて嬉しいです。ありがとうございます! (2021年11月27日 12時) (レス) id: 33f8ec8fc5 (このIDを非表示/違反報告)
白狐 - Twitterも私アカウント持ってないのでフォローできてないんですけど、見させてもらってます! 絵上手ですね あと、夢垢の小説も面白いです! (2021年11月14日 20時) (レス) id: d2923587f7 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:冴川冬香 | 作成日時:2021年2月7日 17時