それでも私は山田家の娘III【伊作編】

……ズレてる ページ13

「乱太郎、伏木蔵」


半刻後。


左近のおかげで、無事満杯まで薬草を採り終えることができた。

日暮れ前までかかるだろうと思っていたのに、まだまだ太陽は高いところにある。


何にしても、私たちのチームの作業はほぼ終わりだ。

私は左近を連れて、木の下で待つ乱太郎と伏木蔵のところへ歩いていった。


「あ、A先輩、左近先輩」

「もう少しで終わりそうですぅ」


伏木蔵の言葉通り、後は外に出している風呂敷を籠の中に入れたら仕分けは完了のようだ。


「お疲れ様でした」

「ありがとうございます」


こんなに早く終わったのは皆が頑張ってくれたからだ。

私は笑顔で労いの言葉をかける。


「少しお茶休憩にしようか」

「いいんですか？」

「夏が近づいてきて最近暑くなってるし、脱水症状になっても困るでしょ？ ちょっとくらい休んでも、伊作先輩は怒らないよ」


私の言葉に納得したように頷くと、左近も乱太郎の横に座った。


「そういえば、A先輩」


こくっと一口お茶を飲んだ伏木蔵が、私の名前を呼ぶ。


「A先輩と伊作先輩って、恋仲なんですか？」

「あ、それ私も気になってました！」


キラキラとした目で見上げてくる一年生二人の言葉に、私は思わず咽せる。


「んなっ！？ まさ、か、ケホッ、ケホッ」

「ちょっ、お前たち何聞いてるんだ！」


そういうことは気になっても聞いちゃダメだろ、と左近が声を荒げる。


……左近、背中さすってくれるのは嬉しいんだけど、怒るポイントがズレてるよ！？

というか左近も気になってるんだね。

そういうわけじゃ→←幸運の

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す