純白ブルース 【吉沢亮】

■君に無くて俺にあるもの ページ11

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Aに連れてこられたのは公園だった。
大きな遊具に入れば、すぐに姿が見えなくなってしまう。
昔はよくこういうので遊んでたな…なんて思い返す




『 ここ、お気に入りの場所なの 』


「 …… 」


『 今"ここが？"って顔したな 』


「 いやっ、違うって 」




別にそんな事思ってないけど。

というか、何か分かる気がするんだよな。
こういう狭くて暗い所って妙に落ち着くじゃん。

座ってるAの隣に座ると彼女が鞄の中から資料を取り出した。




『 今度受けるオーディションの役が10代でお母さんになる人の役で 』


「 ……おぉ 」


『 その後旦那さんを殺めちゃって子供と一緒に逃亡するんだけど 』


「 ……めっちゃヘビーだな 」


『 スゴいよね。何か色んな事が2時間15分の内に起こりすぎてるっていうか… 』




Aが今まで出演した作品からすれば、かなり重たくて、内容の濃い話だ。

凄くやり甲斐のある役じゃん。

だけどAは表情を堅くしたまま口を噤んでいる。




「 どうした？ 」


『 私にも吉沢さんみたいな繊細さがあればいいのにな 』


「 …え？ 」


『 少し羨ましい 』


「 いや……何言ってんの。あり得ないでしょ 」


『 ……な、なんで？ 』


「 俺なんか主役になれても飾りみたいで、客席だって埋められないし、現場だってまとめらんなくて、 」


『 …… 』


「 Aだったら絶対埋められただろーし 」


『 そんな事な、』


「 あるでしょ。だってA売れてるもん 」





俺を羨む要素なんてどこにある？
Aは演技力も名声も持ってるくせに

沈黙に耐えきれなくて口を開こうとすると、Aがこっちを向いた。





『 吉沢さんは優しいじゃん 』


「 ……は？ 」


『 それで、心が綺麗 』


「 ……何言って、」


『 若干ネガティブだけどね 』


「 ……それは余計だろ」


『 ネガティブで心が繊細で、それが芝居の端々に出てるから私は良いなって思う 』


「 ……なにそれ 」


『 私は純粋に、吉沢さんの芝居が好きだよ 』





なんだよそれ……。

じわじわ言葉が沁みてきて、なんか照れ臭い。





『 そう思ってる人はきっと他にも沢山居ると思う。それだけは忘れないで欲しい 』





……忘れられるかよ。
嬉しくて、少し恥ずかしいけど、でもやっぱ嬉しくて

軽くなった気持ちに素直に笑えるようになったんだから。






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