9-1. 醒めない夢 ページ20
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練習室に入って、少しだけ床に寝転がってみた。
今日はホントに……夢見たいな1日だったなぁ。
ずっと醒めない夢みたいな。
ステージの上で浴びた紙吹雪と歓声は、多分一生忘れないと思う。
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「おい、こんなとこで何してんだ」
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ぶっきらぼうにかけられた声に体を起こした。
向こうから歩いてくるジェボムはジャージ姿で私の前に立つ。きっと練習してたんだろう。
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『そっちこそ』
「俺は練習。お前は」
『練習。それ以外ない』
「そうか」
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あいご〜〜って言いながら座るジェボムはちょっとおじさんみたいだ。
無造作な前髪と剃られてないヒゲの感じが尚更。
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『何しに来たの?』
「別に。お前が居たから声かけただけ」
『暇なんだ』
「いや?凄い忙しいけど?久しぶりに会ったら声かけるだろ」
『そうですか』
「今日何でそんなに冷たいんだよ」
『え、いつもじゃない?』
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ジェボムと喋ってる時はいつもこうな気がするんだけどなぁ。
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『それよりさ、この前のあれ』
「あれ?なんだ?」
『……会った時言うってやつ』
「……」
『まさか忘れてるとか最低だからね』
「(笑) 嘘だよ、(笑) 覚えてるって」
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また床に体を預けた私の隣で三角座りするジェボム。
拗ねたと思ったのか彼は黙り込んでしまった。
穏やかな時間が流れるこの場所で、彼は何を考えてるんだろう。
この人の心を読むのは案外難しかったりする。
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『ジェボム氏』
「なんだ?」
『私、デビューしましたよ』
「そうか」
『凄く時間はかかったけど』
「……そうだな」
『やっとスタートラインに立ちましたよ』
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ガッセはまだまだ遠いけど、やっと同じ土俵でスタート出来た。
あとは自分がどれぐらい頑張るかだ。
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『よし。練習するかね』
「何の練習してたんだ?」
『今度のKCONでカバーステージやるからそれの練習。先輩の曲やるよ〜〜』
「へぇ」
『興味なさそやな』
「あるよ、ある」
『2回返事する時は大体嘘ついてる時って知ってた?』
「別に嘘じゃない」
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まぁいいや。
てかそろそろ帰らなくていいのかな。
結構居るけど練習途中なんでしょ?と思ったら「そろそろ行く」って自分からドアに向かってった。
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「あ、そうだ」
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何か思いついたらしく振り返った。
なーんか絵になるのがムカつくなぁ
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「デビューおめでとう」
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作者名:Kaulu | 作成日時:2019年11月12日 10時