壊れた忍

・ ページ22

・


A「あんたは、いい香りがするな」


立花「そうか？」


A「ああ」


善法寺伊作とはまた違う匂い。

薬草とか、そういうのではない。


自然と、ふわふわと、なんだか、不思議な気持ちになるような.....


立花「ほら、大丈夫か？」


A「！」


頭を撫でられ、そっと立花仙蔵の膝に寝かされた。


A「ちょ、おい......」


立花「目を瞑れ」


A「俺は、寝れな......」


立花「いいから」


A「.......」


はぁ.....と小さくため息を吐き、目を瞑った。


立花「.......」


さらさらと前髪を撫でられた。


立花「苦無で髪の毛を切る奴がいるか。後でタカ丸に整えてもらえ」


A「ん」


そうか、タカ丸は髪結い処とかいう所の出身だったな。

髪結い処って、なんだろう。


まあ、後で聞けばいいか。


立花「....〜〜〜〜♪〜〜〜♪」


優しくて、低い声.....でもすごい落ち着く声で、小さな音を奏で始めた。


暖かい.....



なんだか、眠、く........


立花「おやすみ、A」


A「.......」




いつか、誰かは忘れた。




けど、誰かが、いつもこうして、俺に.......




小さな、子守唄を奏でてくれていた。





ぼんやり、記憶にいるんだ。




誰だっただろう。




もう、忘れてしまった。

まあ、いいや。






A「す.......」


立花「幸せな夢を.......」





眠ったAのおでこに、口付けをひとつ落としたのだった。

・→←いつぶりだろうか、ぐっすり眠れたのは

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す