人魚姫【十龍之介】 (ページ3)

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「素敵な歌声だね」
「わああああ！？」

ﾋﾞｸｯと少女は体を揺らす。歌うことに夢中で、俺が話しかけたことに相当驚いたようだ。
その証拠に目を見開いてこちらを見ている。

「つつつつつつ！？

つ、つなしりゅうのすけ！？」

目を見開いたまま、少女は俺を指さして口をぱくぱくとさせる。面白い反応だなぁ

「わー知っててくれたんだ～！
うれしいなあ」
「知ってるも何も！！
沖縄のチョーーーーー有名人だよ！？

握手してください！！」
そうせがまれる。キラキラした彼女の瞳に写る俺が困惑してるのがわかるよ。
彼女のキラキラした表情から、まだあどけなさの残る可愛らしさが感じ取れた。高校生かな？

「うん、全然いいよ！
その代わりと言ってはなんだけど…

君の歌がもっと聞きたい、な」

俺がそうまっすぐと伝えると彼女はｷｮﾄﾝとした表情に変わった。表情の切り替えの早さに思わず笑みがこぼれる。

「うちの…？」

「うん。君の。ダメかな？」

「全然いいけど…
じゃ、期待にお応えしまして！」

ﾆｺｯと微笑み、勢いよく立ち上がって岩の上に立つ。おっとと、なんて呟きが聞こえる。

「……ハロ窓を開けて小さく呟いた
ハワユ誰もいない部屋で一人
モーニン朝が来たよ土砂降りの朝が
ティクタク私のネジを誰か巻いて___」

まるで、世界が静寂に包まれたのかと思った。
比喩とかではない。
彼女の歌声以外聞こえなくなったのだ。

「……ｯ」

すごい。
こんな感覚なんて、陸くんの歌を聴いた時以来____いや、それ以上かもしれない。

人を惹きつけるなにかがある。

「？
終わりましたよ？」
「あ、うん
とっても綺麗な歌声だね

ファンになっちゃったよ」
「ふぁぁぁ！？ファン！？
おおおお烏滸がましいです！！！すみませんありがとうございます！！！！」

土下座までしてペコペコしてる彼女は、表情がころころ？いや、くるくる？変わって本当に可愛らしい。

「また、ここに来たら歌ってくれる？」

俺がそう問いかけると、「えぇ！？も、もちろんです…！」と眉を八の字にしてそう答えた。

「よければ…あそこにある海の家に、来てくださいね」

うち、あそこの看板娘として働いてるんで！
ﾆｺﾆｺしながら言う彼女に、俺は名前を聞いた。

「うち、知念Aって言います！」

「知念ちゃんね
今日は素敵な歌声をありがとう

また明日、ここで会おうね」

「はい！」

彼女はずっと手を振って見送ってくれた。