人魚姫【十龍之介】 (ページ18)

今日:7 hit、昨日:1 hit、合計:25,229 hit

14 ページ18

*(つなしside戻ります)

薄い窓の向こう。
日も暮れて、朱と蒼が入り交じる。
綺麗な色。
ぼーっと空を眺めてると天がぽつり。
「…龍と、あの子みたい」
「…え？」
「あ、わかるかも
海は龍、お前で、空は A。」

突然のことに理解が追いついてない。
珍しく天と楽の意見が同調しているのがまず面白い。

「…広い心の海みたいな龍と、
好奇心旺盛でコロコロ変わる空みたいなあの子。

…意外とお似合いだよってこと」

ふふ、と笑う現代の天使。
綺麗な顔だなって、ずっと思ってる。

「…天も楽も、いい男だよね…」
「「龍に言われたくない」」

再び空と海に視線を戻す。
天と楽のせいで、知念ちゃんを思い出してしまう。

胸がｷｭｯと締まる感覚。

「…ねぇ龍」
「ん？」
「明後日帰るって、伝える気なの？」

天の言葉に、揺らいだ。
今日伝えてしまったら彼女は悲しむのではないか。
明るい彼女の笑顔を、消してしまいたくはない。

でも…勝手にいなくなってしまうほうが、辛いのではないか？
そう思うと、ちゃんと伝えた方がいい

「…うん。」
「そっか」
「そーだな。
ちゃんと帰ってくるって、言ってくれるなら安心するだろ」

そうだよね。俺は間違ってない、はず！

3人で明日のことや、歌の合わせなどいろいろ話した。

「…そろそろじゃない？
姉鷺さんはボクと楽が気を引いとくから、心置き無く話してきな」
「そうだ。
がんばれよ」
「うんっ！
ふたりとも、ありがとう！」

室内では見えない、黒と蒼の混ざった夜の空と、数々の星。
「綺麗だなぁ…」

なんだか星が知念ちゃんへの道標になってるみたいだ

あの海に着いた。
岩場からまた歌声が聞こえる

「__僕は歌う

君の声色香り

忘れないように

僕は歌う

君をこれ以上過去に逃さないように___」

彼女の声だ。

今日のは特に、切なくなる歌声だ。

会えなくなる、という事実を濃くさせ、

それが俺の胸を締め上げた。

俺は泡になって消えてしまいそうな
まるで人魚姫の彼女に特別な想いを抱いていることに気付く。