人魚姫【十龍之介】 (ページ2)

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*

俺はいま、沖縄にいる。
故郷に、戻ってきたんだ。
TRIGGERと一緒に。

そう考えるととても嬉しい。胸が弾む思いだ。

何故俺たちが沖縄に来ているかというと

夏ノ島音楽祭が開かれるからだ。
俺達はそれに招待された。

もちろん歌うのは…“NATSU☆しようぜ！”

社長に止められたが、歌うしかないでしょ。

2人も同じ思いだった。

そして今は自由時間。
1人で地元の海へ戻ってきている。

「わ～…
変わってないなぁ。」

砂浜にﾄﾞｽﾝ、と座る。
砂に沈むこの感じ。懐かしい。

靴下と靴を脱ぎ、そこらへんに置いておく。

俺は浅瀬に足を突っ込んで、海を堪能した。

「……海は、いいよなぁ」

海と陽の境が綺麗に混ざりあっている。
青と橙のコントラスト。

どこか寂しくなったので、浜にあがる。

周りを見渡すと、ふと離れたところから歌声が流れるように聞こえてくることに気づいた。

岩場の方からだ

ここらへんはあまり人が来ない。

どんな子がいるのか？とか思い岩場を覗く

「降り出した雨よやまないで
恋してたんだ
潰れた声枯らして愛してますと
叫んだんだ」

陽を身体中に浴びて。
オレンジの光を放っているように錯覚するくらい夕陽に溶け込んでいた。

どうやら、女の子のようだ。

悲しそうに夕陽を眺め、高く透き通る歌声をここら一帯に響かせている。

なんて、切ない歌い方なのだろうか。

岩に腰をかけている彼女の足を見る

「………人魚？」

そんなはずは無かった。
目を凝らすと両足に巻かれた包帯が嫌でも視界に入る。

(……まるで人魚姫だなぁ)

昔の記憶が蘇る。

_____「ここらぬ海んかいーねぇ、(ここらの海にはねぇ、)人魚様がおったんだよ」

「へー！ばあちゃん、ものしりやねー！
わんも (俺も)会えるかなぁ」

「会えるはずじゃ人魚様ーお歌が上手なんよ( )
歌声を聞けりゃ、ぃやーも(お前も)幸せになれるはずだよ」

「わん、人魚様んかい会いぶさん!(俺、人魚様に会いたい!)」

「会えるとええの」

「うん！」____

婆ちゃんとの会話を思い出した。

「ばあちゃん、俺、人魚様に出会えたよ」