千の夜をこえて vol.2 (ページ41)

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ーーーサンジside

昨夜、夕食時にAちゃんの姿は無かった。

呼びに船内を探すと、彼女は図書室にいたが扉越しに夕食を断られたのだ。

(Aちゃん、かなり落ち込んでるな…)

サンジはいつも通り朝食の準備をしながら、眉を顰める。

すると扉の開く音がした。

『サンジくん？』

その音と共に名前を呼ばれ、扉の方に顔を向けた俺の目に飛び込んできたのは、目元を赤く腫らしたAちゃんだった。

理由を察したサンジは気付かないフリをした。

１食抜いているのだから空腹だろうと声を掛けるが、Aちゃんは朝食もいらないと言う。

その代わりコーヒーを貰えないかと言われ、言いたい事を飲み込んでコーヒーを淹れた。

『美味しい』

サ「それは良かった(ニッ」

『ふふ』

薄く笑ったAちゃんの前に灰皿を置くと、ありがとう、と言ってタバコに火を付けている。

そんな彼女の前に座って、サンジもタバコに火を付けた。

サ「なぁ、Aちゃん」

『ん？』

サ「俺に何か出来ることはあるか？」

『え…』

サンジが吐き出した煙を見つめながら言うと、Aちゃんから戸惑いの声が漏れた。

サ「俺からアイツに話そうか？」

『…うぅん』

サ「じゃあ、愚痴でも聞こうか？」

『愚痴なんて…ないよ』

サンジは視線だけ動かしてAちゃんを見ると、両手をカップに添えて中身を見つめている。

その表情は辛そうな…悔しそうな、複雑な顔をしていた。

サ「俺がAちゃんを支えるよ」

『サンジくん…？』

サ「イラつけば俺に当たればいい。悩めば俺に話せばいい。泣きたければ俺が付き合う」

『……』

サ「俺はどんな事があろうとAちゃんの味方だ。いつだって俺を頼ればいい」

『ふふ、やっぱりサンジくんって…いい男だね』

小さく微笑むAちゃんを見て、サンジは堪らず立ち上がって彼女を後ろからそっと抱きしめた。

ビクッと肩を震わせるAちゃん。

サ「あんな奴やめて…俺にしないか？」

『…っ…？！』

Aちゃんは何も言わない。

俺はそっと彼女の体を解放した。

サ「俺は本気だよ。今すぐにとは言わない。けど、頭の片隅にでも留めといてほしい」

『サンジ、くん…』

サ「さぁ！朝メシの続きを作るかな！Aちゃん飲み終わったらカップそのままでいいからね(ニッ」

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