アプリコットフィズ【Sho.S】

34.ブレイクダウン ページ34

「ねぇ、しょうくん、さっきからなんかたのしくなさそぉ。

あたしといるの、たのしくない…？」


いや、ただ興奮しそうで怖いから

必死に我慢してるだけです…。

そんなこと言えないけど！

今だってホラ、

そんな風に真っ赤な顔で
アーモンド型の目を潤ませてこっちを向く。

自分がどれだけ俺のこと煽ってんのか、
わかってないでしょ？


「いや、たのしいよ…？」


…いろんな意味で。


「うそつきっ！」


俺の頬を軽くつねって

目の前でぷりぷりと怒るAちゃん。

ホント、ぜってー他のやつにはこんな姿見せたくないわ。


「あっ、わかったぁ！」


さっきまでご機嫌ナナメだったのに

今度は急にケラケラと笑いだす。


「しょうくん、ホントは好きな人とごはん食べたいんだっ」

イマ、好きな人とごはん食べてるわ！！


「いいなぁ、しょうくんに好かれるおんなのこ。」

あなただけど？


「ふわふわしててかわいいんだろうなぁ。」

いや、むしろ見た目はキツめかも。


「あたし、可愛げないもんなぁ。」

実は死ぬほど可愛いくせに何言ってんの。




「…やっぱりあたしじゃだめ…？」


ケタケタと笑う顔が急に寂しそうな顔になった瞬間

アタマの中で何かがブチッと切れる音がした。

突然回路が切れて

画面が真っ暗になるみたいな感じで

思考回路は全てストップ。


隣にだらりと座っている君を

搔き抱く。

こないだの事故とは明らかに違う

力のこもった意図的なモノ。

そしてそれに応えるかのように

背中に回る華奢な腕。


フワリ、といつもはしないフレグランスの香りがして

それが俺を唇へ誘う。


僅かに残った理性が

こんなことして、お前このあとどーすんの？って問いかけるけど

残り大部分のオトコな俺は

腕の中で素直に抱きしめられてこちらを見つめる女の子を素直に欲しがる。


触れた唇は想像以上に柔らかくて。

舌を出せば

君は全部分かってるオトナだから

小さく口を開く。

俺の舌の動きに合わせて

自分の舌を絡める。

溺れそうな程、気持ちのいいキス。

君のそれはある意味、経験を物語っているんだろうけど

もういいよ、全部この瞬間のためだったんでしょ？と割り切れるほどに、

それくらい、気持ちのいいキス。



酸素が足りなくなって

くそっ、と思いながらも一度唇を離したとき


「すきっ…」


小さな声が聞こえて

思わずAちゃんの方を見ると

再び口を開くことはなく

悲しそうに笑っていた。

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