夢語神龍弐【名前固定】 (ページ10)

今日:5 hit、昨日:0 hit、合計:1,192 hit

二節　九部ページ10

そう聞く前にティナが声を被せて悲鳴をあげる。

「指示なんです、全て……ボスの指示なんです………っ…私は望んでないっ！こんなのっ！こんなっ………辛すぎる結末……」

　その時、ティナの心が垣間見えた気がした。助けてと叫ぶ心の内が。

　騙したくなんてなかった、こんないい人達

　普通に仲良くなりたかった

　普通に仲良くなって、友達になって………

　こんなの、一ミリも………っ

「殺して………っ」

　その一言で彼女の心に呑まれたナオは現実に引き戻される。

　仲良くしてくれた人を騙してまで生きたくないっ

　こんないい人を殺してまで生きていたくないっ！

　ナオは迷った。ぐるぐると思いが身体中を回っていく。

(殺さなきゃ…いけないの………？確かに殺さなきゃ決着もつかないし、何より……)

　ナオは少し立ち止まってから意を決して顔を上げ、震える手で剣を握る彼女を見つめると剣を右手から左手へ持ち直し、ぎゅっと汗と共に握りしめ右下から左上へ振り上げた。肉が裂ける音を立て胸を切りつける。裂いた体から吹き出る血液はナオのクリーム色のワンピを赤く染め上げた。

　彼女が血に落ちる寸前に見えたのは

『ごめんなさい、＿＿＿＿＿』

　と動く唇だった。
　彼女の胸の傷から溢れ出る血が地に広がる。

「ぅぁ…ぁ……っ」

　その光景を虚ろに見つめていれば力が抜け手から刀が音を立てて滑り降ち自身も膝から崩れ落ちる。

「あああああああああああああぁああああああああああぁあああああああああぁ!!!!!!!!」

　絶叫

　その声はこの広いダンスホールに響き渡る。

　人を殺した、殺してしまった。それもとっても優しい子。

　優しくて可愛くてドジでおっちょこちょいで。でも、やっぱり笑うと可愛くて

　そんな大切な友人をこの手で殺した

　これが例え正当防衛というものでも

　人を、友人を、この手で殺してしまった

　この事実は何も変わらない

　この罪はこの先、消えることはない

　自分は、自分だけは絶対に許すことは出来ないだろう

　顔を覆い泣き喚く。

「ひぐっ…ぁああぁあっ……ごめっ…ごめんなさいっ……ごめんなさい、ティナ……………ぁあ……ごめんなさい……っ…………ごめんなさい………」

　どうか私を許さないで

＊