四節 十一部 ページ44
どんどんと沈んでいく、足掻いて藻掻いて必死に手を伸ばし続けていた。
ずっと苦しんでいたのだ。誰かにこの苦しみから救って欲しかった。解放して欲しかった。しかし、どれだけ手を伸ばしても救われないと分かって、いや、己が救うほどの価値もないと理解して手を伸ばすのを一度躊躇したのだ。一度躊躇すれば後の祭り。もう手を伸ばすことは出来ない。
その諦めそうになる手を掴み、救い出したのはナオだった。
「なら大丈夫だ」
「…はぁ…？」
「自分ならまず死なない。んでうちの子らは自分のことは裏切らない。裏切りそうなやつはまずクロが関わらせない。あの人過保護だからね！苦しそうに笑っても、辛く耐えてても、悔しそうにしてても、泣いていても、とりまクロがなんとかしてくれる。基本的にクロが何とかする。難しいこととか、そういう問題はまずみんなで共有、楽しいこともみんなで共有、悲しいこともつらく苦しいこともみんなで共有！感情は、分けてけば少しは落ち着く。それの感じ方は人それぞれではあるけれど、うちの人たちそう弱くはないからね。それから、自分にゃ君が必要だ。自分らの旅に君がいなきゃ意味が無いんだ。
＿＿＿＿＿大丈夫、自分を信じろ」
じっと真っ直ぐ見つめられる瞳にアカは背けるように顔を下に下ろす。
「俺には無理だ………」
【そこにいる、
空気に溶ける言葉。ナオはアカの様子に溜息を着いた。
「わかってた、何となく」
「………何が」
ナオは困ったように笑った。
「君の主ってティナだよね」
息を飲む。いつから知っていた、何処でバレた、何で、如何して……
息が出来なくなる。ヒュッと喉から空気が漏れる。
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作者名：宇宙ノ彼方 | 作成日時：2019年7月28日 19時
