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四節 七部 ページ39

黒龍は同じように壁を思いっきり蹴飛ばすと歪な音を立てて壁が凹み、道が姿を現した。

「シオすげぇ!!」
「戦時指揮する者として些細なものでも見逃さず記憶しておくのは常識なので」

 ふふん、とまでは行かないが少し嬉しそうに控えめに胸を張る橙龍。可愛いかよ。そんなことより初めて聞いた戦時指揮。橙龍は国の指揮官だったようだ。

「へぇ、指揮官だったんだね」
「そうです………あれ?」

 今までそんな記憶無かったはずなのにしっかりと覚えている一部の記憶。橙龍は首を傾げた。その様子にあぁ、とナオは声を漏らす。

「お守りが解け始めてんだよ」

 その言葉に驚いて思わず橙龍はお守りを取り出す。

「物理的に溶けてるわけじゃないから」
「じゃあ、どういう??」
「そのお守りに封印されていた記憶の欠片が持ち主である君の元にあることでその封印が解けてきて、その中の記憶が君の元へ戻っていってるの」

 そのお守りを指さしながら言う。橙龍はお守りを見やるとぎゅっと大切そうに握った。
 その様子にナオは少し思ったことがあった。

(そういやなんでそのお守りアカが持ってたんだろ…?)

「さっさと行くぞ」
「ん、はぁい」

 中は薄暗く、カンテラの光だけを頼りにひたすらに真っ直ぐを歩いていく。

「ずっと真っ直ぐの細道……」
「避難経路みたいなものだろ」
「ずっと掘り続けたってこと?」
「うーん…?」
「それよりなんで俺を先頭に……」
「だって道を見っけた張本人じゃん?」
「はぁ…」

 橙龍を先頭に、押すように背中にくっつくナオ、金龍、黒龍と一列に並んで歩いて行く。

「ん、もうすぐ壁だよ」

 最後まで歩くと壁だと思っていたものは少し重そうな扉だった。随分と錆びていて長い間使われていないことが分かる。ナオはそれに何か違和感を感じつつも扉に手をかける。見た感じ魔法トラップなどもなさそうでギギギと錆びた音を立てて開くと光が隙間から差し込んできた。

「………そ、外だ」
「意外と簡単だな」
「これといってユーレイ現象起きなかったね」
「……え…?なんか………え??」

 何事もなく終わるこの依頼(クエスト)にナオはなんだかよく分からない感じが体に残り、不完全燃焼か変な気分になる。

(なんか気持ち悪いなぁ、何も無いわけないのに…)

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作者名:宇宙ノ彼方 | 作成日時:2019年7月28日 19時

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