四節 二部 ページ34
「へ、あ、あぁ掲示板裏に落ちてたヤツ。多分外れちゃったのかな」
何か気になったナオはちらりとその中身を確認する。
【お手伝い：報酬二百万Ｇ】
「は、ちょ、え？」「わ、ちょっ」
吃驚する〇の数に思わずアカから紙を取る。
「これは良い稼ぎ所……」
「いや、怪しくね。どう考えても」
目を輝かせるナオにつっこむ黒龍。
「うん、まぁ、そうなんだけど」
(これは所謂詐欺的な、悪的なそんなようなものなんだろうけど)
分かっていても本能が気になっているんじゃ行かないなんて選択肢はない。
「どうにしろ、依頼書として張り出されてる辺り自分らがやらなきゃ他に被害が出る訳で。これは自分らで対処すべきだ」
そういえば黒龍の瞳が鋭くなる。分かっていたことだがナオは思わず身を固まらせる。
「あのなぁ、俺らはそんな其の筋みたいなんじゃない。ただの旅人で冒険者だ。他人なんてほって自分の利益だけ考えるべきだ」
つまりは自身に不利益な善意はいらないと。
黒龍の言いたいことはナオも理解はしていた。
理解【は】。
「だが自分は後悔はしたくない、後々こうすりゃだとかうじうじしてたくない」
「そもそもこういうものは見て見ぬふりが一番良い、干渉すれは手遅れだ」
「自分らで終わらせりゃいーんでしょ」
ふふん、と自信ありげに笑う。全くわかってないようなその姿に黒龍は呆れ、ため息をつく。ナオは何枚か依頼書を手に取って受付へ申請しに行った。
「クロ様のそのちょいちょい歯向かう？口答えする、ようなその感じなんなの？」
その間に金龍は前々から少し気になっていたことを聞いた。その言葉にあー…と多少濁しつつ黒龍は答えた。
「俺なりに主のあのどうしようもないお人好しを治そうかと思ってな……あのお人好しさはいつか自身の身を滅ぼす」
黒龍はナオの後ろ姿を少し眉を寄せ辛そうに見る。その様子に金龍も釣られてナオをみた。そして今までの出来事を思い出す。
「……でも、そうだね、あれは……」
身を滅ぼしかねないかも……
ナオのあの、身を呈して迄守り抜く名も姿も知らぬ誰かの為
いつかその誰かを庇って死にかねない
「死なれんのは困るんだ」
世界の為にも
_______俺の為にも
:(
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作者名：宇宙ノ彼方 | 作成日時：2019年7月28日 19時
