三節 五部 ページ20
「………ぇ」
適当に一箇所にやられたイラスト
「あぁ、邪魔だったから一箇所にまとめた。さっさと片付けといて」
ぐるり
何かが身体を巡る
(確かに片付けなかった自分が悪いけど…だからってこんなぐしゃぐしゃにしなくても…)
瞳に映るのはぐしゃぐしゃになった自分が書いた××××達。
ぐるり、ぐるり
黒いものがぐるぐると身体の中を駆け巡る
(なに、これ、きもちわるい)
ぎゅっと胸を握って＿＿＿＿
「はぁっ…」
夜、新しい家で目を覚ます。外を見るとまだ薄暗く、ナオはゆっくりと身体を起こした。
(何ださっきの夢……)
身体に残るぐるりとしたあの感覚。
(気持ち悪い…)
嫌な感覚から逃げようとベッドから降り部屋から出た。廊下にある大きな扉を開けるとまだ何も無い殺風景な大きな台所が姿を見せる。その台所の端にある大きな冷蔵庫に手をかけ、ガパッと音を立て開くと中はまだスカスカで、手にしたのは何本か冷やされている瓶のジュース。それを開けるとパシュッと炭酸の抜ける音が静かなこの空間に響いた。
(…まだ残ってる)
あの夢と同じようにぎゅっと胸を掴む。
(あれはきっとここの時じゃない時の記憶……)
なんて、ありえない馬鹿みたいな考えに呆れ、忘れるようにグイッとジュースを流し込む。
「…何してんだ主」
誰もいなかったはずの空間に自分以外の声が突然聞こえ、ばっと後ろを振り向くと少し眠そうにしている黒龍の姿があった。
「眠れないのか…？」
「それは主の方だろ」
何も言えず、思わず目をそらす反応を見せたナオに黒龍は溜め息をついた。
「何があったんだ」
「…夢を見てただけだよ、記憶が無くなる前の記憶だと思われる夢」
それを聞くと黒龍は嫌な事を思い出したかのように顔を顰めた。そんな黒龍をナオは軽く頭を撫でてやる。
「……なら、主も不安そうな顔をするな」
「え？、そんな顔してねぇよ」
「嘘は良くない」
「嘘じゃないって」
「じゃあ今何考えてる」
力強く腕を掴み黒龍は言う。
「……何って」
ナオは思ってもなかったことに動揺し、思わず顔を俯かせ黒龍の瞳から逃げる。
「【自分は一体何者なんだろう】」
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作者名：宇宙ノ彼方 | 作成日時：2019年7月28日 19時
