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ユンギくんに連絡しようと携帯を取り出したら、タイミングよく目当ての人からの着信がきた。すぐに画面にタップして、通話を開始する。
[あ、ユンギくん？]
[……A、]
[ふへへ、ナイスタイミングだよユンギくん。ちょうど今ね]
「 [A] 」
「あれ？声が電話からじゃないように聞こえ………え？！？！」
耳に当てられた携帯からではない方向からユンギくんの声が聞こえて、辺りを見渡すと、私の少し後ろに立ち尽くす幼馴染の姿が目に入った。慌てて駆け寄ると、そんな私をジッと見つめながらユンギくんは耳に当ててた携帯を離し通話を切った。周りにバレないように黒い服に身を包み、帽子を深く被る幼馴染の様子を伺う。
「ユンギくん、たしかあっちの公園で待ち合わせじゃなかったっけ…？」
「ねえ、さっきの、だれ」
「んぇ？さっきの……？」
「……店から一緒に出てきたヤツ」
「あ、ああ！先輩かな？大学も一緒でたまにお世話になってる先輩なの」
「───ああ、そう」
私の質問に返さないことに少し違和感を感じつつ、聞かれた言葉にひとまず答える。なんだか朝より暗い雰囲気な気がする。やっぱり人混みに行くのは良くないのかな…。
先輩が去っていた方向を見つめるユンギくんに、言いようのない不安に襲われる。
「──────」
「………え？なあに？」
「ん、なんでもない。それよりバイトお疲れさま」
小さな声で何かを呟いた彼に声をかけるとはぐらかされてしまった。何でもないのなら、いいのだけれど。僅かに残る違和感をそのままにユンギくんは言葉を続けた。
「あ、Aヌナ。これ持ってきたから被っといて」
「わわ、……帽子？」
「バレないと思うけど、絶対じゃないから…もしも撮られたときのためにね」
「ひええ、気をつけねば…ありがとう、でもユンギくんは私が守るからね」
「はは、じゃあお願いします」
先ほどの暗い雰囲気とは一転して、いつも通りの和やかな雰囲気に戻ったことを察し、よくわからないけどよかったとバレない程度に小さく息を吐いた。
「帽子ありがとう。私そこまで気が回らなかったや」
「ん、じゃあ行くか」
「うん！久々のユンギくんとのお出かけ嬉しいなあ」
「俺もヌナと一緒で嬉しいよ」
屋台で焼きそばとりんご飴は絶対食べようね！とはしゃぐ私をユンギくんはやさしい表情で肯定してくれた。
───たぶんきっと、この頃から少しずつ、じわりじわりと何かが変化していたのだと思う。
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作者名：みいこ | 作成日時：2022年9月6日 15時
