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「A〜これ3番卓にお願い〜」
「了解で〜す」
「そういやお前体調悪かったんだって？昨日の今日で大丈夫？」
「あ、もう大丈夫です！ご心配おかけしました」
「おお、ならよかった。まあ辛くなったら言えよ〜」
「ありがとうございます！3番卓いってきま〜す」
料理を作りながら気にかけてくれたのは、同じ大学に通う1つ上の先輩だ。たまたま同じ講義でグループワークが一緒で、あーだこーだ議論や課題をしている内に仲良くなったと思ったら、バイト先まで同じという偶然。いつだって明るくて人懐っこい性格の先輩とは、自然と距離が縮んだ。自分が留年しているからと、いろんな情報も教えてくれたり頼りになる先輩である。
「その講義はテスト直前の回だけ受けてれば単位は余裕だ」「あの教授、実はカツラなんだぜ」「あの講師はさっきの教授とデキてる」「テストの過去問やるから昼メシ奢ってくんね？」…………頼りになる…？まあ仲のいい先輩にも恵まれて、バイトも楽しくやってますということで。
慌ただしくも、時間は過ぎてゆき、あっという間に退勤の時間になっていた。あとは裏口にある廃棄用の場所に、このゴミ達を片付ければ終わりだ。ふう、と一息ついていると後ろから声が掛かった。
「A〜俺もう上がるけど」
「あ、先輩。お疲れさまです。私もこのゴミだけ片付けたら、上がります」
「じゃあ手伝うよ」
「先輩がやさしい……は！先輩、私今日お金持ってないです」
「おい、お前俺のこと何だと思ってる？」
「ふへへ、冗談ですよお〜」
先輩とのんびり片付けをして、更衣室で別れた。さっと着替えを済ませて、時間を確認する。ユンギくんとの約束の時間まで少し余裕があるから、軽く化粧を直してから出よう。
「──あれ、先輩？」
「あ？お前まだ帰ってなかったの？」
「このあと用事があって、少し時間に余裕があるんです」
「お？なに？デート？ついに春が来たか？」
「なっ、ち、違いますよ！幼馴染と出かけるんです！」
「な〜んだ、つまんねえの」
可愛い妹分に彼氏ができたと思ったのになあ、なんて全然残念そうじゃない顔で言われた。妹と言われて嬉しいはずなのに、なんでだろう。全然嬉しくないぞ。
「妹は早く兄にも春がきて欲しいと思ってますよ〜」
「く…俺だって彼女の一人や二人…」
「いや二人はダメでしょ」
しょうもない話で笑い合いながら先輩と別れて、ユンギくんとの待ち合わせ場所に足を向けた。
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作者名：みいこ | 作成日時：2022年9月6日 15時
