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「今日から一週間オフなんだ」
そう言って機嫌良さそうにキャリーケース片手にやって来た夏の夜。当時ユンギくんはもうアイドルとしてデビューしていて、私は大学に通っていた。
「………え、泊まるの?」
「うん…だめ…?」
「だめじゃないけど…実家じゃなくて平気?最近帰省する度に顔出すだけで私の家に入り浸ってばっかりじゃん、お母さん寂しがってるよきっと」
突然の訪問に驚いたけれど、アイドルをドアの前にずっと立たせるわけにもいかず、一先ず玄関へと入ってもらう。
ユンギくんはバツが悪そうに頬を掻いて呟く。
「……帰るって連絡するの忘れてて、俺置いて昨日から旅行いったんだよ」
「あ〜すれちがいかあ〜残念だねえ」
そういえばこの前、母に電話した時に「ミンさんとこ、来週旅行行くんだって。いいわねえ〜私たちも行ってこようかな」なんて言ってた気がする。
「ん…だから泊めて。せっかくの連日オフだし、ヌナの家にある漫画読み尽くす」
「……まあいいけど。その分ご飯また作ってね」
「そのつもりで材料も買ってきました〜」
「ユンギさま最高〜!」
家事全般が得意ではない私に比べ、宿舎生活で料理の腕を磨き始めた幼馴染は、私の考えなんてわかっていたらしい。スーパーの袋をみえるように掲げドヤ顔をしてきた。ご飯を作ってもらえる嬉しさに、どうぞどうぞとユンギくんを歓迎した。
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作者名:みいこ | 作成日時:2022年9月6日 15時