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この奇妙な関係のきっかけは曖昧だけれど、きっと些細なことの積み重ねだったと思う。
幼馴染のユンギくんとは、家が隣でもともと親同士が仲良しで、生まれた時から春のお花見、夏のバーベキュー、秋のお月見、冬のクリスマスと年越し…挙げたらキリがないくらい様々なイベントを共に過ごしてきた。それは幼稚園や小学校に上がっても同じだった。だからと言って四六時中べったりだった訳でもなく、お互いが適度な距離感で過ごしていたため、周囲から幼馴染であることを告げると毎回驚いた顔をされていた。
「私たち幼馴染に見えないって」
「逆に幼馴染見えるってどんな感じなの」
「う〜んわかんない」
「だろ?俺らはこのままでいいんだよ」
ユンギくんは音楽の道へ進み、私は特にやりたいことも明確にないまま進学し地元で一人暮らしをしていた。ユンギくんが上京してアイドルになっても、たまに帰省してくるときにユンギ一家に呼ばれて一緒に過ごすこともあれば、しれっと私の部屋に居座って漫画を読んでいるなんてこともあった。
「友達が日本に留学して」
「ふうん」
「スラダンをお土産にくれた」
「マジ?!?!」
「でも全部日本語で私読めない」
「…………おれもだ」
お互いの恋愛事情も知らないし、多分それぞれに彼氏彼女がいた時もあったと思う。けれども別に私たちの関係は家族同然のもので、特に離れることもせず、のんびりと会話し、たまに私の買い物に付き合ってもらったり、ユンギくんが「最近料理し始めたんだ」と言うから、それを振舞ってもらったりしていた。
「…おいしい」
「そりゃよかった」
「女として負けた気がする……」
「なんだそりゃ」
この奇妙な関係のきっかけはよく覚えていないけれど、たぶんはじまりは、私が体調を崩し始めたことだと思う。
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作者名:みいこ | 作成日時:2022年9月6日 15時