きなりいろ3

ピオニー ページ9

翔平side

昨日の宣言通り少し離れたところにいるAを
じっと見るけど視線に気づかないのか見ないようにしているのか、グラウンドを真っ直ぐ見つめるA。

すっと立って横を通る時に声をかけようとすると
朗希に先を越された。

朗希「今日はグラウンド出ないんですね。
俺とキャッチボールする？少しは上手くなるかもよ？笑」

朗希に揶揄われると、顔を赤くしてぷりぷり怒る。

そんな顔、俺しか知らなくていいのに。

嫉妬心がふつふつと湧いてきて
ずかずかと近寄り、Aに声をかける。

「ねえ、爪割れたんだけど何かある？」

『え、どこですか？』

少し焦ったように、いつも抱えている赤いバッグを漁る。

朗希も大丈夫ですか？とこっちを向くけど、
それには大丈夫、アップしてきな、追い出して
Aの隣に座る。

「ま、嘘だけど？」

『え？』

「けどAに触りたいから手だけ貸して。」

ほら、Aが手出してくれないと変に見えるじゃん。

おずおずと出してきたAの手に
自分の手を乗せる。

「朗希、かっこいいよね。」

『人気だよね。』

「油断しないでよ、Aは俺のなんだから。」

『翔平くんだって、私のなんだからね？』

そう言ってふわっと笑って痛くもない手を見るふりをする
Aに負けた、と思う。

レーズン→←マルベリー

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す