君にありったけの。 (ページ9)

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HJ side

『ヒョンジンさん、？』

「次。次会えた時にはAのこと連れ去っていい？
その、変な意味じゃなくて...世界が見たかったら、」

『俺に着いて来いって？笑』

Aはふふっと笑ってからこっちを見上げて
楽しみにしてますねと呟いた。

社交辞令かもしれないけど
その言葉が今はすごく嬉しい。

『じゃ...今日はありがとね、』

名残惜しくてどうしたらいいか分からなくて
言葉に詰まっていると
持っていたバッグをゴソゴソするA。

取り出したものに何かを書いてから
俺に差し出す。

「何？図録なら俺も買ったのに、」

『交換しましょう。』

「何書いてくれたの？」

『うーん、秘密です。』

何それ、どうせ帰ったら見れるのに。笑

「じゃあ、俺も書いてから渡すからちょっとだけ時間ちょうだい。」

近くのベンチに腰掛けて
バッグから出した鉛筆で最後のページに書く。

『そんなに時間かけて何書いてるんですか？』

「ん？秘密。」

『ずるいです。私短時間で書いたのに！』

「何？適当に書いたのを俺にくれたの？」

揶揄ってから横目で確認するとムッとする口元。

自分でもびっくりするくらい自然にAの頬をするりと撫でる。

びっくりしたのか固まったAに
これ以上近づくと自分が危ない、と思って
急いで図録を閉じて手渡す。

「はい、できた。」

『私も家に帰ってから見ますね？』

「ん。」

『明日は何時の飛行機なんですか？
気をつけて帰ってくださいね。』

残酷な言葉をつらつらと並べる。

「午前の便で帰る予定。
...帰ったら忙しくなるけど、連絡するから無視しないでね？」

『次、楽しみにしてますね。』

「うん...じゃ。」

振り返りたい気持ちが大きいけど
それをしてしまったら元には戻れない気しかしない。

少しだけ離れたホテルまで
頭の中を整理するためにぶらぶら歩いた。