君にありったけの。 (ページ7)

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Aside

"昨日も可愛かったけど、今日も可愛い。"

甘い言葉に優しい顔。

きっとみんなに言ってるんだ、騙されるな、と
頭の中で警笛が鳴る。

昨日はすごい警戒心だったのに
一度懐に入ると一気に距離がつまるタイプなのだろうか。

「お、これ綺麗。ほら見て。」

すーっと離れて撮りたい写真をたくさん撮るのに、
気づいたらまた近くに戻ってきていて
見てよとさらにぐっと近づいてカメラの画面を見せてくる。

『すごく綺麗ですね！私が見てる景色と違う気がします。』

「ん？」

『もっと綺麗で奥が深いというか...』

じっとカメラの画面を見つめすぎたのか、
頭上から笑いを含んだ声が聞こえる。

「Aも写してごらん。適当にいじっていいから。」

ぽいっと高そうなカメラを渡されて、
渡した本人はさっさと近くの芝生に座ってこちら見る。

『壊しそうで、』

「そんな簡単に壊れないから大丈夫大丈夫。」

そう言われてレンズをのぞいて1枚だけシャッターを切る。

「お、どう？」

立ち上がってこちらに手を伸ばすヒョンジンさんに向けて
もう1枚。

「ヤー、どこ撮ってんの、笑」

『昨日撮られたお返しです、笑』

いらないよ自分の写真なんて、と言いつつも
データを見返しているヒョンジンさん。

「お、イケメンだね？笑」

横目でこっちを見て
冗談っぽく笑うヒョンジンさんにつられて笑う。

「あ、今のも撮っとけば良かった。」

『え？』

「んーん？お昼食べに行こ。」

ぼそっと何か呟いたように聞こえて聞き返したけど
さらっと流された。

ご飯屋さんに向かって歩きながら
暑い暑いと項垂れるヒョンジンさんは
汗っかきなんだよね、と服をパタパタしながら歩く。

せめてもと持っていたハンカチを渡すと
ありがとう、と受け取ってふと顔に寄せる。

「いい匂い。」

なぜか急に恥ずかしくなって急いで手を伸ばす。

「だーめ、もう俺が借りたやつだから。」

ひらっとかわしながら逃げるヒョンジンさんを追いかけながらこの瞬間がとても楽しくて大切で儚く感じたのは秘密。