君にありったけの。 (ページ4)

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HJ side

『ヒョンジンさんはよく日本に来るんですか？』

名前を知り歳を知り、
最初よりお互い楽に話す。

にこにこと聞いてくるAに思わず苦笑う。
ほんとに知らないんだなって。

「来るけど仕事だからゆっくり観光とかはできないし、」

ちらっと顔色を伺うけど
へー、と聞いたくせにあまり興味のない返事。

「韓国人の友達はどんな人？」

『どんな人...可愛くて綺麗でかっこよくて優しい人です。』

「何それ、最強じゃん、笑」

『ふふっ、うん、最強なんです。』

思い浮かべながら笑うから
その笑顔がすごく自然ですごく綺麗で。

思わず持っていたカメラのシャッターを切った。

『わ、何ですか』

「ん？思わず、笑」

消してくださいって真っ赤な顔をして言うけど

「このカメラで撮ったのはどんなにぶれてても消さないって決めてるから。」

少し拗ねたような顔をするのが
スンミンを思い出させる。

ほくそ笑みながらカメラの画面を見て時間に驚く。

「わ、もう行かなきゃ。」

『あ、そうなんですね。次の予定間に合いますか？』

「うん、急いで行くよ。」

バッグに図録やらカメラやら急いで詰めながら
このままAと別れるのが残念で。

「A、連絡先教えて」

頭の上に？？が飛んでいるのがわかりやすいくらいに分かる。

「せっかく仲良くなれたのに、と思って、」

断られたらどうしよう、
と少し尻すぼみに言葉を紡ぐ。

『そうですね。電車の乗り方がわからなかったら
連絡ください、笑』

そうゆう意味じゃないんだけど、
と思いながら差し出されたQRを読み込む。

「じゃ、ありがとう。連絡するね」

名残惜しく感じて、もう一度だけ振り返ると
Aも見ていたようで笑って手を振ってくれる。

何でもなかったかのように手を振り返して、
マスクの中、にやつく自分に気づくことはなかった。