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HJ side
ふらっと外に出て散歩してたら雨に降られて
ひっそりとした路地の入り口近くで雨宿りをする。
パタパタと走ってくる足音が聞こえて
帽子を深く被り直して横目で確認すると
ずっと待ち焦がれていた人。
予期せず目の前に舞い降りて来て、
腕一本分の距離すらもどかしくて。
『えっと...それは全然大丈夫なんですけど...』
「けど?」
『近いです、』
コートのポケットに握った手を突っ込んだら
自然に近くなる距離。
うろうろと彷徨うAの目線を捕まえるには
「わ、目にゴミ入ったかも」
そう言えば人のいい君はすぐに心配して
顔を覗き込んでくるって分かってるから。
『え、大丈夫ですか?見た感じは...』
「うん、嘘」
色素の薄い大きな瞳がさらに開かれる。
「Aが、ちゃんと見てくれないから。」
『だからって...』
不満そうにするその表情も可愛い。
半歩より小さい距離をさらに詰めて
お互いの靴先が当たる。
そのまま少し下にある白いおでこに
こつん、と自分のおでこをくっつける。
Aの体に力が入ったのが
ポケットの中の小さな手から伝わってくる。
「友達と会う予定ってことは、
結局俺が1番に会えたってこと?」
『そう、ですね。...嬉しいですか?』
仕返しのつもりなのか
少しだけ口角を上げて目を見てくる。
「うん、嬉しいよ、ほんと。」
この気持ちがそっくりそのまま
君に伝わったらどんなにいいか。
仕返しが成功しなくて
あからさまに動揺する表情の君に笑う。
「俺、Aに話したいことたくさんあるんだよ」
『話したいこと、ですか?』
あんなに電話してても言えなかったこと。
「ん。」
言葉選びに時間がかかる。
♪♪♪
『あ、電話、、』
「はあ...」
少し救われたような、また言えなかったって残念なような。
右手だけ離してスマホを持つ。
さっと離れていくAの左手を目で追いながら
電話に出る。
CB「チャギヤ〜どこにいるの?」
「雨降ってたから雨宿り。」
CB「雨?もう降ってないけど?」
そう言われてAの向こうを見る。
もう降ってないことなんて、知ってた。
ただ、この通り雨みたいに
君も何もなかったかのように過ぎ去ってしまいそうで。
無駄に足掻いて引き止めるしかなかった。
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作者名:み | 作成日時:2023年12月17日 22時