君にありったけの。 (ページ11)

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Aside

気づいたらヒョンジンさんの腕の中にいて、
その暖かさにドキドキしながらも
これは外国の方々のハグだと必死に頭をフル回転させる。

「次。次会えた時にはAのこと連れ去っていい？
その、変な意味じゃなくて...世界が見たかったら、」

『俺に着いて来いって？笑』

ヒョンジンさんを見上げて楽しみにしてますね、と返すと
ふわっと優しく笑い返してくれる。

『じゃ...今日はありがとね、』

そう言って私から離れたのに
なかなか歩き出さないヒョンジンさんは
きっと人と別れるのに慣れてないんだろうな。

バッグからペンと図録を取り出して
最後のページにメッセージを書く。

「何？図録なら俺も買ったのに、」

『交換しましょう。』

「何書いてくれたの？」

『うーん、秘密です。』

「じゃあ、俺も書いてから渡すからちょっとだけ時間ちょうだい。」

そう言ったヒョンジンさんは、近くのベンチに腰掛けて
バッグから出した鉛筆で少しだけ時間をかけ書いていく。

『そんなに時間かけて何書いてるんですか？』

「ん？秘密。」

『ずるいです。私短時間で書いたのに！』

「何？適当に書いたのを俺にくれたの？」

揶揄ったように笑うからムッとすると
当たり前かのように伸びてきた綺麗な手が
私の頬をするりと撫でた。

びっくりして何を言ったらいいか分からない中
何でもないように立ち上がるヒョンジンさん。

「はい、できた。」

『私も家に帰ってから見ますね？』

「ん。」

『明日は何時の飛行機なんですか？
気をつけて帰ってくださいね。』

「午前の便で帰る予定。
...帰ったら忙しくなるけど、連絡するから無視しないでね？」

『次、楽しみにしてますね。』

「うん...じゃ。」

ヒョンジンさんが振り返るかもしれないから。
その時見ててくれる人がいなかったら私は少し寂しいから。

色んな言い訳をして少しずつ離れていって
人混みの中に消える背中を目で追いかけた。

家に帰ってから開いた図録には
今日一緒に見た綺麗な景色の絵。

鉛筆だけで描いた物だし、短時間だったのに
私にとってはいつでも見れるはずのあの景色が
すごく大切で綺麗なものとして思い出される。

"A、メッセージ見たよ、ありがとう。
早く来れるように頑張るね。"

"私も見ました！感動です...大切にしますね！"

この思い出を大切にしたい。

そう思いながら眠りについた。