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BC side
カムバの準備に忙しいのはメンバーだけじゃなくて
もちろんスタッフもで。
カムバを終えたら2ヶ月後には日本でのライブもある。
それらの準備と同時並行にやっていくのが
正直心身ともにこたえるわけで。
メンバーたちが休憩中騒ぐ中、
練習室の端っこに座っていると自分に誰かの影がかかる。
誰かなんて見なくてもわかる。
あの子の柔らかい香り。
『これどうぞ。』
みんなに配ってきただろう水を手渡される。
受け取ってからすぐに反対の手で
Aが水を持っていた手を掴む。
BC「手冷たくなってるね、」
そんなのただの口実。
ただ、君を近くに感じたかっただけ。
それだけで、時々この騒々しくて人ごとみたいな毎日が
少し身近で少し楽に感じる。
『もともと冷え性なので、』
そう言って手の中からあっけなく逃げていく。
少し疲れたり気持ちが落ちると
弟たちは変化に気づいてあまり近寄ってこない。
それがありがたくもあり、寂しくもある。
パタパタと離れて行ったはずなのに
またその軽い足音が戻ってきた。
疑問に思って見上げると
少し困った顔で笑いながら目の前にしゃがむA。
BC「ん?どうしたの?」
『これも、食べてください。疲れてる時には甘いものが1番です。』
そう言って綺麗な紙に包まれた一粒のチョコレートを
手のひらに乗せられる。
『でも、最後の一つだから他の人たちにはなくて...
内緒ですよ?』
真剣にそう言う君は、俺たちのことをいくつだと
思ってるんだろうか。君が1番年下だというのに。
BC「うん、約束」
もう一度その手に触れたくて小指を差し出すと
意外にも素直に絡まる君の小指。
切れないようにちゃんと親指でスタンプを押してから
少しだけ乱れたAの前髪に触れて直す。
そうすると我に帰ったように
ぱっと逃げていくから自然に笑みがやってくる。
本当は甘いものは少し苦手だけど
Aがくれた大切なチョコレートだから口に放り込み、
喉に張り付く甘ったるさを水で流し込んだ。
それでも、久しぶりに食べたチョコレートは
優しい味がした。
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yuri(プロフ) - この作品が大好きです!更新待ってます🫶🏻 (4月25日 19時) (レス) @page39 id: 1890c5fb44 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:み | 作成日時:2024年2月5日 22時