そばに (ページ23)

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Aside

おんぶされて気がついたら見覚えのない部屋で
チャニオッパに抱き抱えられていて、
それだけでも情報過多なのに熱がある頭が働かなくて。

優しく穏やかな声が心地よくて
つらつらとサナちゃんにも言ってない身の上話をしてしまう。

自分の中で、熱があるからって言い訳さえして。

『毎日会いに行って、部屋の前で呪文みたいに
"泣くな、笑え"って言い聞かせて。
...葬式には当たり前にあるはずの写真がなくて、
みんなの中にいる1番の笑顔を思い浮かべて欲しいって理由みたいですけど...最期の数ヶ月一緒にいたはずなのに
もやがかかったみたいに思い出せなくて。ちゃんと向き合えてなかったんだって思い知らされました...』

言葉に詰まりながらゆっくりと話すA。

BC「そっか、よく頑張ったんだね、A」

暖かい腕の中で暖かい大きな手でぽんぽんと背中をさすられる。

BC「うーん...Aに泣かないでって言いたいけど、
ずっと1人で頑張った分。泣いていいよ。」

"泣いていい"なんて、
言われたことも思ったこともなかった。

バンチャンさんのどこまでも大きな優しさに
また視界がじわっと滲んでくる。

BC「いつか、どんな素敵な子だったのか話聞きたいな。」

変わらず私の背中をゆっくりさすりながら
ふふっと優しく笑った声がじんわり響く。

泣いたからかまた沈みそうになる意識を
必死に繋ぎ止めるためにゴソゴソと動くと
力強い腕にさらにぐっと閉じ込められる。

BC「ヤー、A。今日はとことん甘やかしてあげるから
もう諦めて寝なさい。」

半分眠ってる頭では離れなきゃ、と思うのに
この暖かさに縋りたい気持ちもあって
バンチャンさんの服の裾を掴む。

BC「おやすみ、A。...るよ、」

私の名前の後が耳に届くことはなく意識が深いところまで
沈んだ。

ああ、まだありがとうもおやすみも言えてないのに。