となりのおうちのお兄ちゃん-ar.in-

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あれからもう何度目の春が来たんだろう。







イチゴ狩りの日を境に
俺の中でまるで何かが変わったみたいに
いのちゃんに対する思いが少しずつ変わっていった。






そして分かったんだ。
そっか、これが…愛ってやつなのかって。






今まではずっと、自分の気持ちが先だった。

いのちゃんが優しいから
お兄ちゃんだって事に、気づかないうちに甘えていたんだと思う。






けどきっとそれは、自分が相手を好きだから
そして
相手も自分を好きでいてくれてるからっていうただのエゴで






本当の愛は、自分の事よりも相手の事を優先に考えてあげる事だと今は思えるようになった。







だから俺、ちゃんと言えるよ。







4月から医大生として
遠くへ行っちゃういのちゃんに、笑顔で゛行ってらっしゃい゛って。






゛寂しい、行かないで゛






慧｢こーら、なんて顔してるの？｣






゛離れないって、言ったじゃん…゛






大｢俺…変な顔、してた？｣







プルルルルルル…

『○○発○○行き新幹線は△時△分頃6番線に到着いたします。
1号車、2号車、3号車は…』







まるで子供の頃、俺をなだめてたみたいに
優しい指先がそっと俺の頬に触れた時

グッと飲み込んでこらえてた気持ちが、一気に溢れそうになった。






大｢…っ、いのちゃ…っ、行っ…、っ、…。｣






言葉を詰まらせて、すがるように思わず掴んだ、いのちゃんのジャケットの両腕






慧｢っやだな、泣かないでよ。大ちゃんがっ…泣いたら…っっっ、｣







その手を離したらきっとしわくちゃになってるくらいに

ぎゅうと強く強く握りしめて掴む自分の両腕に
涙を隠すように顔を埋めて






トン…とそのまま一歩、後ろに下がった。






そして、次に顔を上げたらちゃんと上手く笑えるように
深呼吸をして、ゆっくりと顔を上げ、口角をグッと無理やり引き上げた。






大｢離れてても…っ、｣






だけど堪えられるはずのない気持ちが、勝手に目から溢れ出たのが分かった。

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