猛毒の少女、壊れかけの世界へ【まほやく】 (ページ11)

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その時、階段の上からカインさんが駆け寄ってきた。 

  カ｢シャイロック、助かった！｣   

シ｢貸しにしておきますよ。今度、一杯ご馳走して下さいね｣   

カ｢一杯と言わず、一晩付き合うさ。賢者様、行きましょう｣  

  カインさんはこちらに手を伸ばす。

その光景は少し、五条先生が初めて家に来たあの日に似ていた

でも、あの日とは違う。

私はこの人を無条件に信じるなんてことが出来なくなってしまった

〝行きましょう〟って、どこに？

そもそも賢者って言ったって何をすれば良いの？

信用しても大丈夫なの？

私の迷いをカインさんが感じ取るには十分な時間だったと思う。

足を止め、優しく頷いた。

カイン｢あぁ……。悪かった。賢者様は異界からやって来るんだよな。じゃあ、アンタは何も知らないわけだ。｣

 ｢何も知らないのに、ついて来いって言われても怖いよな。……ええと……｣ 

シャイロック｢カイン。この世界や賢者の役目について、全部説明してる暇はありませんよ｣   

カイン｢分かってる。だが、何も知らない相手を連れ去るのは騎士の仕事じゃない｣ 

すると、カインさんは私と目線を合わせてこういった。

カイン｢A、簡単な説明をしよう。俺たちはあんたの力が必要だ。あんたの力を貸して欲しい｣

｢何でかって言うと、俺たちがボロ負けしたからだ。毎年簡単に勝ってた勝負に大負けした。 油断したつもりも、手を抜いたつもりもない。  髭の爺さんたちは、俺たちがいい加減に仕事をしたと思って怒ってる｣

カインさんはそう言うと、少し悲しそうな顔をした。

 カイン｢だが、そうじゃない。何だか分からないまま俺たちは負けて、仲間を半分失った。 もう、何も失いたくない……。だから、あんたの力を貸して欲しい｣ 

｢勿論、それは俺たちの我儘だ。この世界はあんたの世界じゃないし、あんただってしたい事があるだろう｣